清く正しく美しく
買い物
駅の最寄りのスーパーに入ると、冷気が頬に当たって熱くなった顔を程よく冷やしてくれた。
「琴葉さんは何食べたい?」
理玖は籠を手に取って持ち、青果コーナーに向かいながら尋ねてきた。
「月島くんは?」
「一緒に話しながら形成できるやつがいいな。ハンバーグとか餃子みたいな」
「楽しそうですね!今日はハンバーグにして、次は餃子にしませんか?」
「いいね、そうしようか」
優しく笑う理玖と目が合い、程よく冷えた頬がまた熱くなってきた気がした。
――また月島くんのお家に来てもいいんだ。
今日だけではなく、次の約束が自然とできたことが凄く嬉しい。自分の頬が緩んだのが分かった。
「ハンバーグとサラダと味噌汁……があればいいかな?」
理玖は指を一本ずつ折りながら尋ねてきた。
「はい。よければ、冷蔵庫にある食材で副菜を何か一つ作るので食べてもらえたら嬉しいです」
「いいの!?やった、楽しみだよ」
琴葉さんの料理食べてみたかったんだよね、と理玖が本当に嬉しそうに言うから、琴葉も嬉しくなって頬が緩んだ。
――こんなに喜んでくれるなら、料理をもっと勉強しよう
琴葉はそう決意した。
それから、ハンバーグのソースを和風にするかデミグラスにするか話しながら決めたり、必要な食材に同時に手を伸ばして指先が触れて少し照れたりと、楽しく買い物をした。
「なんか、こういうのいいね」
買い物を終えて理玖のマンションへ向かう途中、他愛もない話をしていたら、ニコニコ笑いながら理玖が言った。
琴葉もつられて笑顔を浮かべたら、さらに追加する。
「新婚みたいで」
琴葉は顔に熱が急激に集まってくるのを感じた。理玖の方を見たまま、口を開いたり閉じたりして、言葉が何も出てこない。
――新婚みたいで
そういう未来を、考えてもいいのだろうか。同じ家に帰って、一緒にご飯を食べて、一緒に眠る。そんなことができたのなら、とても幸せだと思う。
「いつかそうなれたらいいなって思ってるから……ちょっと気が早いけどね」
そう優しく微笑まれて、琴葉の顔がさらに熱くなった。少しだけ見惚れながら、一度ゆっくり瞬きをして、頷いた。
理玖の方を見られなくなって、咄嗟に理玖に手を伸ばす。
「やっぱり私も持ちますよ」
琴葉の大学用のバッグも、先程のスーパーで買ったものが入ったバッグも全て持ってくれているのだ。少しくらい持たないと申し訳ない。
そう思って手を伸ばしたら、理玖の手に触れて心臓が飛び跳ねた。
「じゃあ、こっち持ってもらおうかな」
少し顔を赤くしながら、理玖が持っていた荷物の中で一番軽いものを渡してくれる。
そこまで気を配らなくても良いのに、と思うけれど、琴葉のことを思ってそうしてくれているのは分かっているから、凄く嬉しい。
「そうしたら手繋げるしね」
そう言って右手が大きくて温かい手に包み込まれて、琴葉は心臓が口から飛び出そうなほどドキドキした。