隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「.....承知しました。この一件が終わりましたら婚約破棄、お受けいたします」
「なっ、本気だぞ」
「はい、承知致しております」
「..........っ」
カァーッと首まで赤くして苛立ちを見せる殿下。
私が縋ってこないのが気に入らないのだろう。
しかし、婚約破棄してくれるというなら願ったり叶ったりだ。この宙ぶらりんの状態にも、殿下の馬鹿さ加減.....もとい。物事を深く考えない単純さにも嫌気がさしていたから。
「では、リルハ嬢の件に戻しますね。どうか彼女の今後に関わることですので.....トランドル男爵令嬢、お話頂けませんか」
今度は彼女に向かって頭を下げた。
公爵令嬢が男爵令嬢に頭を下げるなんてあり得ない。憤りも感じるが、この場で把握した彼女の性格上、私が婚約破棄された場面を目の当たりにして、頭まで下げてきたとなればきっと見下してしゃべり始めるかと思ったのだ。
彼女にドリンクを渡した給仕に証言してもらっても、他の目撃者を探したとしても。あの殿下のことだ。間違いなく私たちが嘘をついていると言ってくるだろう。
この場にいる者の中で彼が信じるのは、トランドル男爵令嬢本人の言葉だけなのだ。
しばらく私をじっと見ていた彼女は、やがて小さく吹いた。