【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?

 低く、ゆらりと。フェンリル様の立派な尻尾が振れる。

 警戒をあらわす動きに、背後の人物は隠しもせずため息を落とした。

「怒るな。せっかく、久方ぶりに友に会いにきてやったというのに。《《失礼》》だぞ?フェンリル」

「頼んでいない。今、いいところなんだ。邪魔するな」

 私は、そっと頭をずらして確認する。
 のぞいた先に立つ人物に、あんぐりと口が開いた。

 淡い金髪、空の青をうつした瞳。どこかオズウェル前国王やコーネル元王太子の面影を感じる顔つき。

 この方はーー

「テリウェル・モーリャント国王陛下....」

「うむ。ウィルフォード公爵夫人、ご機嫌いかがかな?」

 言ってから、柔らかな笑顔で手をひらひら振っている。

「...........っ」

 突如、状況を理解する。
 彼はいつからそこに居たのだろう。

 フェンリル様との触れ合いを見られてしまった羞恥と、なぜか陛下が我が家の庭に立っていることへの驚愕。

 国の最高地位に鎮座する人物を前に、フェンリル様の腕に抱かれ座っている状況に狼狽する気持ち。

 全てが一気に襲いかかった。

「も、申し訳.....っ、あっ」

 とにかくご挨拶をと、私は慌てて立ちあがろうとしたが、足に力が入らずカクンと頽れてしまう。

 すると、陛下は察して手を前に出し、こともなげに言い放つ。

「よいよい。私は、今日プライベートで来ている。堅苦しいのはなしだ」

「当然だ。突然来るやつがあるか。《《失礼》》な奴め」

 ひぃっと小さくのけ反って、顔が青ざめる。
 一国の王に向かってその口の利き方はありなのか。いや、絶対アウトだ。
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