【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
そろそろ時間だというのに、折れない夫と先ほどから不毛なやりとりが続いていた。
ほとほと手を焼いて困っているジャスミンだが、それでも、駄々をこねる夫を可愛いと思ってしまっているあたり、自分も同類かもしれない.....。
そう思ってしまった。
「.........ふぅ」
「............」
妻が息を吐いた気配に、ピクリと大きな身体を揺らす。彼女の反応を恐れ、せっかく整えられた耳は無意識にぺたんと寝て、尻尾は垂れ下がっていた。
自分がどれほど無茶なことを言っているのか、フェンリル自身、十分わかっている。
それでもーー
不安なのだ。
人間のジャスミンは、『番』がわからない。
彼女も自分を好いてはくれているが、きっと想いの強さや執着心でいえば、自分の方がよっぽど上だ。
限界などないほど、日毎、彼女への想いは膨れていくのだから。
狼獣人が番を見つけたら、生涯その番だけを愛する。当然、自分は彼女以外視界に入らないし、彼女以外欲しいとも思わない。
だが、ジャスミンはーー
そう思うと、居ても立っても居られなくなる。
例え、ただ参列者への感謝を述べているだけだとしても、きっと自分は耐えられない。ましてや、この美しい姿でーー。
妻の瞳に他のものが映るだけで、大きな不安や嫉妬に駆られて、どうしようもないのだ。
「....フェンリル様?」
「.....ん?」
意外にもかけられた声音は、怒りや呆れを含んでいない。それどころか、丸みを帯びた優しいものだった。
おそるおそる顔を上げると、目尻は垂れて、ラベンダー色の瞳をたたえた目は愛らしく細められていた。
「.....これ」
チャリ。と微かな金属音を響かせて、彼女がそっと前に差し出したもの。贈った日から毎日彼女の首元で、輝くパープルサファイアだった。