【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「不安、なんだ....。君が他の者を、好きになって、しまわないかと.....」
言いながら、自分の余裕のなさに呆れ返る。
だが、彼女は変わらず柔らかく笑っていた。
「フェンリル様」
「............」
「パープルサファイアの石言葉があるのをご存知ですか?」
「.....いや」
「初恋の思い出」
「初恋の....思い出?」
「ええ。
知ってましたか?
フェンリル様は、私の.....初恋なのです」
「え.....だ、だがーー
君は婚約者が、いたんだろう?」
そう。テリウェルがリーフェント家へやって来た日言っていた。
テリウェルの甥・コーネルとジャスミンが婚約していたと。
適齢期の貴族の娘だ。少し考えればわかることなのに、彼女に夢中で、目まぐるしく変わる状況や感情にのまれて。その日まで他の者と婚約していた過去に、思い至っていなかった。
それを知ってから、フェンリルを不安が襲った。
過去のことなのだからと流せればいいのだが、どうしても、彼女の気持ちが昔、自分以外の男にあったかもしれない事実が、脳裏をちらつく。
と、間を置かず、彼女は答えた。
「いいえ。私の初恋はあなたですわ」
「本当に.....?」
「はい。そして、きっと....。いいえ、絶対に」
ーーこれが、私にとって最初で最後の恋なのです。
「.....最初で最後の恋....?」
コクリとまた頷いた。
その顔は誰が見ても、目一杯の幸せに包まれている。
「確かに、私は獣人ではありません。
でもーー
当然ながら人間にも、色々な方がおられるのです。
私の、あなたへの恋心はとーっても!」
ーー重いのですわ!
「見くびってもらっては、困ります!」
次の瞬間には人差し指を立てて、少しムッと唇を突き出して強く主張する姿を見て、フェンリルの心に熱いものが込み上げる。
「....だからね。私にピッタリだと思いません?」
「..........?」
「あなたの贈り物のセンスが、素晴らしいって話です。
このパープルサファイア.....
あなたの仰る通り、
ラベンダー色の瞳で植物が好きな私に、
色も形もピッタリですしーー
『初恋の思い出』だなんて。
ずっと、ずっと。この先の人生、ずーっと....
あなたへの重い初恋を、育み続ける私に
石言葉まで、ぴったりだなぁって....
そう思うのです」
ふふ、と頬を染めて照れくさそうにはにかむジャスミンは、凶悪なまでに可愛かった。