【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
父は夕方帰宅した。その面持ちは暗く、国王への抗議は芳しい結果を生まなかったらしい。
オズウェル・モーリャント国王は王太子殿下を溺愛している。王妃、ローズ・モーリャントも然り。いつも何かというと甘い対応をして、自分達が息子に甘いことさえ気づいていない。彼らの中では厳しくしている認識の様だ。
おおかた、自分の息子は悪くないとでも主張したのかもしれない。
心配をかけまいと無理をして笑う父に胸がきゅっと痛む。
「.....私、本日はこれで失礼いたしますわ。お父様、お母様。お休みなさいませ」
「ああ。おやすみ、ジャスミン。しっかり休むんだよ」
「ええ、そうよ。ぐっすり眠ってね。私たちの可愛いジャスミン」
そう言って両親は私を抱きしめ、母は額にキスをしてくれた。優しくされればされるほど苦しくなるのは、自分が親孝行どころか迷惑しかかけていないからだろう。
ーーなんだかとても疲れたわ。
他者から向けられる棘が痛くないわけがなかった。
自分を見下す婚約者との結婚が憂鬱でないわけがなかった。
王妃教育だってそう。殿下を好きになれなくても、国民のためになるならと寝る間も惜しんで学んだ時間は何の意味も持たなくなった。
ーー今まで頑張ってきたのは何だったのかしら....
どれだけ努力しようと、殿下や国王、貴族たちに認められる日なんて来なかった。結局最後は紙切れみたいに破って捨てられただけ。
婚約がなくなるのは望むところだ。
ただやり場のない怒りや虚しさで、私の胸の中は真っ黒に覆われていった。
ーー苦しい。どこか遠くへ行きたい。
逃げだとわかっていても、いっときでもいい。
自分を粗雑に扱う人達の視線を、家族に迷惑をかける自分を、忘れたい。
そう思ってしまった。