【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「ええ、そうです。こちらは大変希少なものでして、なかなか入荷されないのです」
「ええ、ええ!初めて見ましたわ。こんな所で出会えるなんて!」
その後も興奮を隠さず随分長く話し込んでしまった私を、フェンリル様はじっと見つめていた。
我に返った時には、スタッフの女性は業務へと戻っていた。
「申し訳ありません、私ったら....」
ラベンダー色の花が視界の端にうつって、気まずさを覚えた。
せっかくプレゼントしたいと言ってくれていたのに、違う植物に夢中になって彼を放っておいた。
しかも、その植物は花でも何でもない。希少価値を知らない者からするとただの葉っぱにしか見えないハーブだ。
いくらなんでもこれはひどいわ。今度こそ変わり者だと馬鹿にされるわよね。
彼の瞳にうつる感情の色を読むのが怖くなって、おそるおそる視線を上げた。
それなのにーー。
「君は花よりそっちが好きなのか」
フェンリル様は嬉しそうに微笑んでいた。
「君を知れて嬉しい」
私は小さく息を呑んだ。
その声は丸みを帯びていて、刺々しさなんてひとつものっていない。
それよりもっと他のーー
胸がそわそわ落ち着かなくなるような、甘さを多分に含んでいる気がしたから。
彼の柔らかそうなふわふわの尻尾は、今日も元気に揺れていた。