【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
◇
ーーカタリ。馬車が到着する。
御者が扉を開けると、ステップの横に彼が歩み寄った。
「長旅、ご苦労だった。.....遠い所をありがとう」
一言目がそんな言葉で、再会を前に緊張していた身体が柔らかく解れていった。
「.....こちらこそ。お忙しい所、お出迎え感謝いたします.....殿下」
フェンリル様とは呼べない。
私はいま人間の姿で、彼と私は初対面なのだ。
視線が無意識に滑っていく。
静かな水面の様な表情と連動する様に、旅の間はいつも揺れていた尻尾が、今はスンとしていて動きを見せない。
彼は私がミーナだとは知らない。
それでいい。本能のまま一夜を過ごした相手など気まずさを覚えるだけ。
いや、もしかすると半年も前のことだ。
彼の中ではとっくに忘れ去られているかもしれない。
番を失った悲しみの方がずっとずっと.....鮮明だろうから。
地面に降り立った私を、フェンリル様はじっと見つめた。
「...........?」
二人の間にしばし沈黙が落ちる。
私が首を傾げた頃、漸く彼が口を開いた。
「ああ、何でもないんだ。.....改めて。フェンリル・ユービィストだ。今回の結婚の申し出、受けてくれて助かった。知っての通り、私には事情がある。本来ならすぐにでも婚姻を、と言いたい所なのだが....妻となる君に、先に説明しておきたいことがある」
「...........?」
「一旦、中へ。ここは冷える。部屋で話そう。荷物は君の部屋へと運んでおくから」
「はい」
そうして、私たちは屋敷の中へ入っていった。
◇
ーーカタリ。馬車が到着する。
御者が扉を開けると、ステップの横に彼が歩み寄った。
「長旅、ご苦労だった。.....遠い所をありがとう」
一言目がそんな言葉で、再会を前に緊張していた身体が柔らかく解れていった。
「.....こちらこそ。お忙しい所、お出迎え感謝いたします.....殿下」
フェンリル様とは呼べない。
私はいま人間の姿で、彼と私は初対面なのだ。
視線が無意識に滑っていく。
静かな水面の様な表情と連動する様に、旅の間はいつも揺れていた尻尾が、今はスンとしていて動きを見せない。
彼は私がミーナだとは知らない。
それでいい。本能のまま一夜を過ごした相手など気まずさを覚えるだけ。
いや、もしかすると半年も前のことだ。
彼の中ではとっくに忘れ去られているかもしれない。
番を失った悲しみの方がずっとずっと.....鮮明だろうから。
地面に降り立った私を、フェンリル様はじっと見つめた。
「...........?」
二人の間にしばし沈黙が落ちる。
私が首を傾げた頃、漸く彼が口を開いた。
「ああ、何でもないんだ。.....改めて。フェンリル・ユービィストだ。今回の結婚の申し出、受けてくれて助かった。知っての通り、私には事情がある。本来ならすぐにでも婚姻を、と言いたい所なのだが....妻となる君に、先に説明しておきたいことがある」
「...........?」
「一旦、中へ。ここは冷える。部屋で話そう。荷物は君の部屋へと運んでおくから」
「はい」
そうして、私たちは屋敷の中へ入っていった。
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