隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「うふふ、お恥ずかしいですわ殿下」
「リルハ・テーナ子爵令嬢。顔と名は覚えた。ジェシカ・トランドル男爵令嬢にいわれもない罪を着せようとした愚かな行い、悔い改めよ。おい、この女を牢に連れて行け」
その言葉を聞いてリルハ嬢に向かって兵が動き出した。
「.....あの。少々宜しいでしょうか?」
私は壁際に置かれた白い革張りソファから立ち上がり、読んでいた本を胸に抱えて、小さく片手を挙げた。
「....何だ、ジャスミン・リーフェント公爵令嬢」
私の声に、数メートル先で動いていた兵と王太子殿下、トランドル男爵令嬢、リルハ嬢が静止する。
殿下はピクッと肩を震わせて冷たい視線をこちらに向けた。別に期待はしていないが、面倒だと前面に出す姿にため息が込み上げた。しかし、言わねばなるまい。
「リルハ・テーナ子爵令嬢は無実です」
「は?」
私の訴えに殿下が間の抜けた声で聞き返す。
あなた、仮にも王太子殿下でしょう。舞踏会の最中に素が出てしまっておりますよ?
心で毒付きながら、私は近くの給仕にまずリルハ嬢にタオルを持ってくるよう指示した。
それからゆっくりと殿下とトランドル男爵令嬢に語りかけた。
「.....私、ここから一部始終を見ておりました。彼女にドリンクをかけたのはトランドル男爵令嬢です」
「なっ、なにを!わたくしがするわけないでしょう!」
カッと顔を赤くしたトランドル男爵令嬢は、私の身分が公爵令嬢であることなんて丸無視して、噛み付いてきた。一部の貴族がその態度に目を眇めている。