【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?

「なんだ、急いでいるんだっ。手短に頼む」

「.....奥様は侍女とともに街へ買い物に出掛けております。《《もちろん護衛も》》きちんとついて。何でも、注文していたものが届いたと連絡が入ったそうでフラワーショップへ向かわれました」

 主人がツッコミそうな箇所など知り尽くしている。未だ《《自覚のない》》主人が暴走して畳み掛けてくる前に、説明にきちんと入れ込んでおくのが、執事の嗜みだ。

「あ....そ、そうか。うむ。.....何だ、買い物か」

「..........」

 やっと我に返ったらしい旦那様に、さすがに口にはできない最近の私の苦労を視線で訴えた。

「.....っ、とにかく、体調不良ではなくて良かった」

「ええ。ですので....そろそろお仕事へ戻られてはいかがですか。.....ケイン様がぼやいておられると思いますよ」

「うっ.....わ、わかっている。今から戻ろうと思っていたんだ」

 黙って頷いて視線と手で促せば、旦那様はくるりと背を向けた。が、二歩も進まぬうちにぴたりと足を止めた。

「....あー....彼女が戻ったら夕食を共にしようと言っておいてくれ。必ず仕事を終わらせて帰るから」

「.....かしこまりました」

 視線を泳がせながらそわそわと言付けて、それに返事を返せばパッと表情を明るくして、勢い込んで仕事へ戻っていった。

 一際存在感を放つシルバーの尻尾が振り子のように振られて、廊下に飾られているいくつもの調度品にバフッ、バフッ、と触れている。

「............」

 今日は倒さないでほしいと願いながら、じっと主人の姿を見送った。壺を飾る台に当たった瞬間、反射的にヒヤリとしたのは仕方あるまい。

 .....すでに三度も割られているのだから。


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