【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「え、ええ。そんな、私こそ。フェンリル様には感謝しかありませんわ」
「う、うむ。それでだな....これを。君は何もいらないと言っていたが、俺が贈りたいんだ。受け取ってくれるだろうか」
「これは.....?」
真紅のビロードの細長い箱。中から出てきたのは、葉の形をしたラベンダー色の宝石をあしらうネックレスだった。
「パープルサファイアだそうだ」
「...........っ」
「仕事の帰りに見つけた。君の瞳の色に似ているだろう?それに、君は植物が好きだから、形もピッタリだと思って」
言葉にならなかった。どうすればいいのだろう。ネックレスを見つめて何も反応しない私に、彼の表情はみるみる萎れていく。
「あ....あの.....その」
「.....気に入らない?」
「い、いえ!そうではなくて....っ」
「では....迷惑、だっただろうか」
眉を下げて尋ねられて、私は激しく首を振る。
「......っ、そんな訳、ありませんわ!とっても嬉しいのです!嬉しいから....」
ーー困るのです。
最後は言えなかった。
こんな心のうちなど言えるわけもない。
私の返答に安堵して口元を綻ばせるフェンリル様を見ていられなくて、視線をネックレスに向けた。
綺麗だった。透明度が高くて、光を反射してキラキラ輝いていて。
彼の目には、私の瞳はこんな色に映っている。そう思うと胸がきゅうっと苦しくなった。
彼にとってこれはただのお礼。勘違いしてはいけない。それなのに.....勘違いしそうになる自分が怖かった。
「ジャスミン?」
「は、はいっ」
不意に名を呼ばれて、フェンリル様を見遣る。視線が合うと、彼は目尻を垂れて優しく言った。
「今日も早く帰る。夕食は一緒に食べよう」
「え、ええ。....ネックレス、ありがとうございます。大切にします」
「ああ。じゃあ、仕事に戻る。ここでいいから」
「はい、行ってらっしゃいませ」
ネックレスの箱を胸にぎゅっと抱いて、彼の後ろ姿を見送った。