【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「何も手を出さないでってことかしら?」
『ただ、ねむらせて。そしたら、はがうまれかわるから.....』
「そうすれば、あなたたちは元気になるのね?」
『..........』
それから返事はなかった。
ーー試してみようと思った。
おかしいかもしれない。でも、どういうわけか不思議な声は植物の声だと確信がもてた。
私は追加で与えようとしていた肥料を中止して、水も枯れない最低限の量に減らし、そっと見守った。
それこそ、見るからに元気をなくしていった日数分、同じだけ待った。
すると、そっくりそのまま二、三日で息を吹き返すようにハーブたちの葉の色が青みを帯びてきて、ピンと張りを取り戻した。
それどころか、以前はなかった産毛が葉の表面にふわふわと生え、葉の厚みも増した。
「すごいわ....」
間違いない。『彼らの』声に従ったら、再び元気になった。
自分の手をまじまじと見つめる。
私は触れた植物の声が聞こえるらしい。
「目....」
今度は目元に指先を這わせた。
『お前さん、いい目をしてるね』
『何だい、気づいてないのかい』
耳の奥で、港で魔法薬を買った老婆の声がした。
「このことだったのね....」
昔から『紫眼』は魔力持ちだという云い伝えがある。どこまで信憑性があるものなのか。正直、ただの迷信だと思っていた。
自国ではこの瞳の色は珍しく、私より淡い色合いの父以外居なかったと理解しているくらい。
今までの人生で『力』を感じたことなんてなかったし、周囲だって瞳の色など気にしていなかった。
けれどーー。
港で会った老婆の瞳は、濃い紫色をしていた。
今回のことを鑑みれば、老婆ほど魔力は強くないものの、私の身体にもほんの僅かながら魔力が宿っていたのだろう。
窮地に追い込まれて目覚めたのか。植物の声を聞けるだけでも、私にとっては有難い。
いや、いっそ一番重宝する力だった。
「とにかく良かったわ、また元気になってくれて。もし必要なものがあったら教えてちょうだいね?」
『ふふふ....』
涼やかな笑い声が聞こえた。