【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「フェンリル様?どうかされました?」
「あ、ああ。何でもない」
「そうですか」
俺を気にかけるジャスミンの声に思考は霧散して、彼女を見遣る。
と、優しく表情を和らげた彼女の頬に、土がついていることに気がついた。
他の者なら声をかけるだけだ。決して手が伸びたりしないのにーー。
どうしたことか、無意識に手がスッと。彼女の白く柔らかな頬に触れて....指が滑らかな肌をすべっていた。
「.........っ」
瞬間、ジャスミンがビクッと全身を硬直させたのを感じて、パッと手を離した。
「す、すまな....、っ」
反射的に、無断で触れたことを謝罪しようと口を開いた。
だがーー。
最後まで言葉を紡げなかった。
作業中いつもまとめている艶やかな黒髪からのぞく、彼女の真っ白なうなじがみるみる真っ赤に染まって。
恥ずかしそうに視線を俯けたのがわかる横顔は、頬に朱が差していってーー。
俺は目を瞠った。
ぶわりと全身の毛が逆立つ。
身体を流れる血液がドクドクと猛スピードで駆け巡り、カッと熱を溜めていく。
彼女から視線が外せない。
この世で一番光り輝くーー
唯一、俺のすべてを掻っ攫っていく女性。
そんな心地になって、自分の矛盾した気持ちに再び戸惑う。
どうしてだ。俺には番がいるはずなのに。
唯一を定めた俺は、他に目をくれるはずもないのに。
「ジャスミン....」
ひとりでに動いた唇が、その美しい名を紡いだ時。
「ジャスミンお嬢様」
背後から彼女を呼ぶ男性《オス》の声が聞こえた。