【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?


 フェンリル様の手が突然頬に触れて、緊張でとっさに身をかたくしてしまった。

 平静を装わねばと思うのに、彼の体温を感じた身体は素直に反応する。

 脳の思考とは裏腹に、全身をカァと熱さが包み込んで、赤くなるのを止められない。

「ジャスミン....」

 謝罪の言葉と、その一瞬あとに届いた、私を呼ぶ声が妙に熱を帯びているように感じて、更に血が勢いを増して巡っていく。

 だめ、気づかないでーー。

 純粋に番を想う彼に負担をかけるのが目に見えている、こんな浅ましい気持ちは隠しきらなければ。そう思って、心の中で必死に願った。

「ジャスミンお嬢様」

 その時、後ろから聞き覚えのある声が響いた。

「ルーファス」

 振り返ると、数日前ハーブのことで相談にのってもらった屋敷の庭師が立っていた。

 私やフェンリル様より年上で、だが、まだ三十代後半くらいだろうか。

 笑うとうっすら目尻に刻まれる皺が優しげな、物静かなリス獣人男性だった。

「ルーファス....?」

 神の助けとばかりに、ルーファスに目を向けていた私はフェンリル様が呆然と呟いた声が耳に入っていなかった。

 スッと立ち上がって彼の元に駆け寄る。
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