【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?

「ありがとうございます」

「いや」

 と、それから動かず、シルバーの瞳がじっと私を貫いた。

「......?」

「君は小さいな。俺の上着にすっぽりおさまって。....とても可愛らしい」

 柔らかな目つきで言った声が、妙に甘く響いた。

 まただ。彼の言葉はいつでも私を乱す。
 それにしたって、今日は特にだ。

 可愛らしい、だなんて。

「フェンリル様が....大きくていらっしゃるんですわ」

「ふっ....ああ。そうだな」

 勘違いしてはいけない。
 彼には愛する番が居る。

 だからーー
 これ以上、優しくしないで。





 花壇を確認してから、また屋敷までの道のりを歩き始めた。

 しかし、そんなに歩かないうちに彼が不意に立ち止まる。

「寄り道して行かないか?」

「寄り道、ですか?」

「ああ。こっち」

 言って、彼はそっと私の手を握った。

「もっと暗くなるから、転ぶといけない。少しだけ我慢してくれ」

「い、いえ。お気遣い、ありがとうございます」

 私の手を引いて屋敷とは反対側へ向かっていく。

「どちらへ?」

「俺の秘密の場所」

「秘密の....」

 イタズラに言う彼は、なんだが楽しそうだ。

 黙ってついていくと、大きな木が目隠しになって隠れた位置に、鍵のかかった鉄扉がひとつあった。

「これは....?」

「くくっ、知らなかっただろ?」

 おもむろにポケットから鍵を取り出してカチャリと回していく。「サイラスには、内緒だ」と指を唇にあてた。

 どうやら普段つかってはいけない扉らしい。
 サイラスごめんなさいと心の中で謝りながら、好奇心は抑えられなかった。

「足元に気をつけて」

「はい」

 ギィ、と錆びついた音を鳴らして開いた扉をくぐる。

 屋敷の整えられた庭とはガラリと雰囲気が変わって、自然のままの芝をサクッサクッと踏みしめて進んでいく。

 両サイドに生えた木々の葉が、微かな光も覆い隠して、より薄暗さが増していた。

 どのくらい歩いただろうか。
< 95 / 134 >

この作品をシェア

pagetop