【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「ありがとうございます」
「いや」
と、それから動かず、シルバーの瞳がじっと私を貫いた。
「......?」
「君は小さいな。俺の上着にすっぽりおさまって。....とても可愛らしい」
柔らかな目つきで言った声が、妙に甘く響いた。
まただ。彼の言葉はいつでも私を乱す。
それにしたって、今日は特にだ。
可愛らしい、だなんて。
「フェンリル様が....大きくていらっしゃるんですわ」
「ふっ....ああ。そうだな」
勘違いしてはいけない。
彼には愛する番が居る。
だからーー
これ以上、優しくしないで。
◇
花壇を確認してから、また屋敷までの道のりを歩き始めた。
しかし、そんなに歩かないうちに彼が不意に立ち止まる。
「寄り道して行かないか?」
「寄り道、ですか?」
「ああ。こっち」
言って、彼はそっと私の手を握った。
「もっと暗くなるから、転ぶといけない。少しだけ我慢してくれ」
「い、いえ。お気遣い、ありがとうございます」
私の手を引いて屋敷とは反対側へ向かっていく。
「どちらへ?」
「俺の秘密の場所」
「秘密の....」
イタズラに言う彼は、なんだが楽しそうだ。
黙ってついていくと、大きな木が目隠しになって隠れた位置に、鍵のかかった鉄扉がひとつあった。
「これは....?」
「くくっ、知らなかっただろ?」
おもむろにポケットから鍵を取り出してカチャリと回していく。「サイラスには、内緒だ」と指を唇にあてた。
どうやら普段つかってはいけない扉らしい。
サイラスごめんなさいと心の中で謝りながら、好奇心は抑えられなかった。
「足元に気をつけて」
「はい」
ギィ、と錆びついた音を鳴らして開いた扉をくぐる。
屋敷の整えられた庭とはガラリと雰囲気が変わって、自然のままの芝をサクッサクッと踏みしめて進んでいく。
両サイドに生えた木々の葉が、微かな光も覆い隠して、より薄暗さが増していた。
どのくらい歩いただろうか。