【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
「もう着くから。.....ほら」
ーー着いた。前を向いて?
「え?」
足を掬われないよう注視していたら、顔を俯けていたらしい。フェンリル様の声に、ゆっくり顔を上向けた。
「....わぁ」
大きく目を見開いた。口から感嘆の声と息が漏れて、それ以上何も言葉にならない。
いつのまにか、見晴らし台のように張り出した丘に立っていた。真っ直ぐに見える景色は高台の美しい景色。
眠らない街の明かりとーー
相反する暗さに浮かび上がる満月とキラキラ輝く星。
まるでーー
ダンスの夜、フェンリル様と見た星空みたい。
「綺麗だろう?」
「....はい」
胸がいっぱいで、深く頷くしかできない。
でも私の表情から察してくれたのだろう。
フェンリル様は嬉しそうに笑った。
「少し座ろう。ほら、ここに」
どこから出したのか、二人が座れるほどの敷物をその場に広げてくれた。
二人で腰を下ろして、じっと夜の景色を眺めた。
言葉はいらなかった。
どちらからともなく黙ってーー
そして、そっと肩を抱き寄せられた。
「ジャスミン」
「フェンリル、様....」
声の甘さにあらがえなくて、
緩慢な動きで彼の瞳に視線を滑らせていく。
至近距離で交わった銀の瞳が
ゆっくりとーー
視界いっぱいに広がって、見えなくなった。
温かな感触が伝わる直前....まるでそうすることが自然なように、滑らかな動きで私の唇は言葉を紡いだ。
大きく膨れた彼への気持ちと、あの日を彷彿とさせる景色を前に、脳のリミッターは完全に外れていた。
「好き....」
聞き取れるか曖昧なほど小さな声は、重なった体温に言葉ごと呑み込まれた。
唇が離れたあと、私の身体を包み込んだ逞しい腕に安心して、私はそっと目を閉じた。
「.....眠い?」
ぼんやりした頭で彼の声を拾った気がするが、返事はできなかった。
ーー可愛いな。俺も好きだよ、ジャスミン.....
眠りに落ちていく意識のなかで、自分にとって都合のいい.....夢でも見ているような言葉を聞いていた。