【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?
*****


「お、おい。団長.....なんであんなに怒ってんだ?」

「知るかよ....ひぇっ、お、おっかねえ」

 ドス黒いオーラに当てられて怯える声が、背後から飛んでくる。

 馬獣人である私、ケイン・クリスフォードは、視界が広い。

 真っ黒な。今にもどんよりと沈み込みそうな。見えないはずのそんな空気を横目で確認する。

「.....団長。お願いですから、もう少し顔を和らげて下さい」

「普通だ」

「びぇっっ」

「............」

 また背後で跳ねる声がした。

 団員たちの震えを受けて注意するも、どうも本人は自覚がないのか、改める気がないのか。

 無意識に私の眉間の皺が深まった。

 心の底から疲労感が込み上げて
 なんとかため息までは堪える、がーー

 我が王国騎士団の団長 フェンリル・ウィルフォードを、呆れと懇願を込めて強く睨んだ。

「.....わかっている」

 全然わかっていない。
 だから、黒いオーラをしまって下さい。

 本気で叫びたくなった。

「ところで、もういいよな。任務は終わった」

「....ええ。完了です。帰りましょう」

「っ、うむ」

「.........」

 瞬間、ドロドロのオーラが今度は花でも飛びそうなほど軽やかで浮かれたものに変わって、瞼が重くなる。

「....おお?なんだ?」

「おう....空気が軽くなったぞ」

「歩きやすくなったなっ」

「ああ」

 ほっと息を吐いた彼らに、心から同情する。

 周囲をも巻き込む団長の機嫌を左右している存在。それはあれだ。

 最近、仕事が一段落すると私に団を任せ屋敷へ駆け戻り、また戻れば目にも留まらぬ速さで仕事を片付けて、夕食に間に合うよう颯爽と帰宅していく。

 あの仕事にしか興味のなかった団長をそこまで変えた、ジャスミン・ウィルフォード公爵夫人。


 婚姻を結んで数ヶ月経ったいま、団長は見るからに彼女にメロメロだ。
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