Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する
展示会から一週間。
オンライン記事が出る。
VOGUE JAPAN
Web版。
見出しは少し刺激的。

《“恋が才能を解放した”Mino デザイナー希、覚醒》

サブタイトル。

《パートナーの存在を公言》

記事にはこう書かれている。

“恋人の存在を隠さず、むしろ創作の原動力にしている姿勢が新しい”

写真には、会場で並ぶ希と旬。
距離は近いけど、甘すぎない。

コメント欄は賛否。

「恋人アピール必要?」
「いや、むしろ潔い」
「才能が本物なら関係ない」

希は静かに記事を閉じる。
少しだけ、胸がざわつく。
(大丈夫。隠してないし)

そこに旬からメッセージ。

【見た?】

【うん】

【俺、肩書きついたぞ】

リンクを開く。

“青山不動産御曹司・佐伯旬氏”

あ、名前まで出てる。

旬は笑ってる。
でもその裏で——


旬の会社の役員会。

佐伯家長男の広哉が資料を置く。

「Minoとの関係、完全に公になったな」

そして、次男凌が冷静に言う。

「悪いことではない。むしろブランド価値は上がってる」

でも一人の重役が言う。

「私情と仕事の線引きは?」

旬は静かに答える。

「線は引いてます。資金も、介入もしてません」

事実。
でも影響力はゼロじゃない。

重役は続ける。

「今後、Minoが拡大した場合、利害関係を疑われる可能性もある」

旬は一瞬考える。
そして言う。

「なら、より透明にします」

全員を見る。

「彼女のブランドは彼女のものです。
俺は関わらない」

広哉少しだけニヤリ。

(本気だな)

凌は言う。

「逆にチャンスでもある。
我々が支援せずとも伸びるブランドと、対等に組める」

旬は静かにうなずく。
恋人だから守る、じゃない。
恋人だからこそ、公平に。

会議後、広哉が肩を叩く。

「覚悟決まってんな」

旬は淡々と。

「並ぶって決めたから」
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