Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する
展示会当日。

白い空間に並ぶ Mino の新作。

今回のテーマは
“Chosen”

柔らかいのに芯がある。
甘いのに、強い。

来場者の空気がいつもと違う。

最初に足を止めたのは
ファッション誌 VOGUE JAPAN の編集者。

「……これ、前回と別人みたいですね」

希は静かに微笑む。

「そうですか?」

強くなっただけ。

続いて、大手セレクトショップ
BEAMS のバイヤー。

「このライン、即完しますよ」

希の胸が一瞬だけ高鳴る。
でも表情は崩れない。

「ありがとうございます」

さらに。

国内トップデザイナーとして知られる
森英恵 の元アトリエ出身の重鎮が、静かに言う。

「恋、しました?」

希、一瞬だけ止まる。
でも目は揺れない。

「はい」

「いい恋だ」

それだけで十分。
評価が一気に上がる。

SNSでもバイヤーが写真を上げ始める。

“新しいMino、覚醒”

“可愛いだけじゃない”

“今季一番伸びるブランド”

控室でスタッフがざわつく。

「受注、過去最高ペースです!」

希は深く息を吐く。
やった。
でも浮かれない。
自分で掴んだ実感がある。

その時。
入り口が少しざわつく。

旬が来た。

スーツ姿。

希と目が合う。
軽くうなずくだけ。

過剰に近づかない。
でもちゃんといる。
それが強い。

その様子を、さっきの編集者が見てる。

「もしかして、パートナー?」

希さあっさり。

「はい」

隠す気はない。

編集者、少し驚いてから笑う。

「隠さないんですね」

「隠す理由がないので」

旬は少し離れた位置で会釈。

大人。

編集者がぽつり。

「恋して作れなくなる人もいるけど」

希は言う。

「私は逆でした」

その瞬間、評価がさらに上がる。

“恋を力に変えられる人”

これは強い。

バイヤーの一人が旬に近づく。

「支えてるんですね」

旬は即答。

「いえ、支えてないです」

「隣にいるだけです」

その言い方がまた、いい。

希は遠くからそのやり取りを見る。

誇らしい。

“守られてる”じゃない。

“並んでる”。

展示終了後。
受注は過去最高。コラボの打診も入る。

スタッフが興奮してる中、
希は静かに旬の前に立つ。

「どうだった?」

旬は即答。

「前より好き」

「服が?」

「希が」

希、笑う。

でも今度は照れない。

「私も」

会場の光の中で、
2人は堂々と並ぶ。
誰に知られてもいい。
隠す恋じゃない。

それがブランドにも出てる。
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