Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する
あの夜のあとから。

旬は、優しい。

変わらず優しい。

でも――

手が、止まる。

キスはする。

抱きしめる。

でもその先へ行かない。

「今日、もう遅いし疲れてるだろ」

「明日早いよな」
理由はいつも正しい。

正しすぎる。

希は気づいている。

(避けてる…よね)

自分が言ったから?

「いつ妊娠してもいい」

あれがプレッシャーになった?

ある夜。

希が勇気を出して近づく。

旬は一瞬受け止める。

でも、少しだけ躊躇う。

その“間”が、痛い。

希は笑ってごまかす。

「そっか、ごめんね。疲れてるよね」

そのまま少し離れて眠った。
いや、眠れない。

旬は何も言わない。

その沈黙が刺さる。


翌朝

目が覚めると

旬はもう仕事に出ている。

ベッドの中で、希は静かに泣く。

声を殺して。

「私が余計なこと言ったからだよね…」

信じてるよって、私は何があっても大丈夫だよって伝えたかっただけ。

でも結果は、

触れられない距離が出来てしまった。

希は今まで以上に仕事に没頭した。

帰宅もわざと遅くして、
帰ってからも書類を手放さない。

今日やらなければならない仕事なんて、ひとつもないのに。

まるで旬が先に寝るのを待つかのようにベッドに入った。

抱きしめられなくても
「旬はもう寝ている」と思えるから。

これ以上拒まれたら…
もう自分を保っている自信がなかった。

怖かった。
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