Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する
カーテンの隙間から、やわらかい光。
目を覚ましたのは同時だった。
でもどちらもすぐには動かない。
昨夜の体勢のまま。
腕の中。
言葉はない。
目だけが、合う。
ほんの一瞬。
すぐ逸らす。
でも、離れない。
旬の腕はそのまま。
解かない。
希も抜けない。
呼吸が重なる。
静か。
安心。
昨日までの“隙間”がない。
希が少しだけ身じろぐ。
すると旬の腕が無意識に強くなる。
離すまいとするみたいに。
希が小さく笑う。
「起きてる?」
小声。
旬も小さく。
「起きてる」
それだけ。
会話は終わる。
でも体温は続く。
キッチンに並んで立つ。
ぶつかる肩。
どちらも避けない。
コーヒーを淹れる旬。
トーストを焼く希。
何も特別なことは言わない。
でも、
コップを渡す手が自然に触れる。
旬が一瞬、指を絡める。
一瞬だけ。
離す。
希も何も言わない。
でも、ほんの少し頬が緩む。
「いってくるね」
「いってらっしゃい」
短い。
でも。
旬がドアを開ける前に、
ふっと振り返る。
迷わない。
希の額に軽くキス。
一瞬。
自然に。
「夜、早く帰る」
命令でも確認でもなく。
当たり前みたいに。
希が頷く。
「うん」
扉が閉まる。
静かな家。
でも今朝は、寂しくない。
言葉は少ない。
でも距離は近い。
背中じゃなくて、隣にいる。