Nocturne(ノクターン)ー美しさは静かに交差する
涙が落ち着かないまま、
希が小さく言う。
「私…そんなに悪いこと言った?」
旬が息を止める。
「え?」
希は視線を落としたまま。
「あのひと言が、こんな事になるなんて思わなかった」
声が震える。
「勇気出しただけだったのに」
「背中向けて寝るくらい、嫌われちゃった?」
その言葉で、
旬の中で何かがはっきり崩れる。
「え?」
思わず出た声。
怒りじゃない。
衝撃。
「どこをどうしたら、そうなる」
希は泣きながら続ける。
「だって最近、距離あるし」
「触れるとき慎重だし」
「今日だって背中向けてたし」
「嫌われちゃったかとおもって」
旬が額を押さえる。
深く息を吐く。
そして、はっきり言う。
「嫌いになる理由がどこにある」
強い声。
希がびくっとする。
旬はすぐ柔らげる。
「希は悪いことなんて一個も言ってないよ」
「悪いのは俺だから」
沈黙。
旬は希の肩に手を置く。
「背中向けたのは」
少し間。
「嫉妬してたから」
希が止まる。
「え?」
「歩と楽しそうにしてたから」
「情けないだろ」
正直すぎる。
「嫌いどころか、取られる気がして腹立ってただけ。希最近俺に笑ってくれないのに、歩とは楽しそうにしてるの見ちゃって。」
希の涙が止まる。
「そんなことで?」
「そんなことで」
即答。
「俺はもういっぱいいっぱいだから」
少し自嘲気味に笑う。
「結婚したから安定すると思ってた」
「でも逆だな」
「失いたくないって思う分、怖い」
希の胸がぎゅっとする。
「私も同じ」
やっと重なる。
旬が続ける。
「希のひと言で壊れかけたんじゃない」
「俺が勝手に未来を背負ってパニックになっただけ」
「希はただ、素直だった」
希の目がまた潤む。
「嫌われてない?」
旬、即答。
「好きすぎて拗らせてる」
間髪入れない。
希、泣き笑い。
「やだ、それ。まだそんなんなの?」
旬がようやく抱き寄せる。
「そんなんだよ。背中向けたのは、顔見たら抱きしめたくなって、意地張ってただけ」
「子どもなの?抱きしめてくれたら良かったのに。」
「ごめん」
少しだけ笑いが戻る。
旬が低く言う。
「二度と“嫌われた?”って言わないで」
「そんな日が来たら俺が先に死ぬ」
「重い」
「本気だよ」
でも声は震えている。
希がぎゅっとしがみつく。
「私、旬に嫌われるの怖い」
「俺も」
やっと対等。
背中じゃなくて、腕の中。
ただ――
抱き合ったまま。
希の顔は旬の胸。
涙がシャツに染みていく。
旬は何も言わない。
ただ、背中をゆっくり撫でる。
一定のリズム。
安心させるみたいに。
希の呼吸がまだ乱れている。
「……こんなふうに泣いてごめん」
小さな声。
旬は首を振る。
「謝らないで」
それだけ。
言葉は短い。
でも腕は離さない。
希が小さく言う。
「私…そんなに悪いこと言った?」
旬が息を止める。
「え?」
希は視線を落としたまま。
「あのひと言が、こんな事になるなんて思わなかった」
声が震える。
「勇気出しただけだったのに」
「背中向けて寝るくらい、嫌われちゃった?」
その言葉で、
旬の中で何かがはっきり崩れる。
「え?」
思わず出た声。
怒りじゃない。
衝撃。
「どこをどうしたら、そうなる」
希は泣きながら続ける。
「だって最近、距離あるし」
「触れるとき慎重だし」
「今日だって背中向けてたし」
「嫌われちゃったかとおもって」
旬が額を押さえる。
深く息を吐く。
そして、はっきり言う。
「嫌いになる理由がどこにある」
強い声。
希がびくっとする。
旬はすぐ柔らげる。
「希は悪いことなんて一個も言ってないよ」
「悪いのは俺だから」
沈黙。
旬は希の肩に手を置く。
「背中向けたのは」
少し間。
「嫉妬してたから」
希が止まる。
「え?」
「歩と楽しそうにしてたから」
「情けないだろ」
正直すぎる。
「嫌いどころか、取られる気がして腹立ってただけ。希最近俺に笑ってくれないのに、歩とは楽しそうにしてるの見ちゃって。」
希の涙が止まる。
「そんなことで?」
「そんなことで」
即答。
「俺はもういっぱいいっぱいだから」
少し自嘲気味に笑う。
「結婚したから安定すると思ってた」
「でも逆だな」
「失いたくないって思う分、怖い」
希の胸がぎゅっとする。
「私も同じ」
やっと重なる。
旬が続ける。
「希のひと言で壊れかけたんじゃない」
「俺が勝手に未来を背負ってパニックになっただけ」
「希はただ、素直だった」
希の目がまた潤む。
「嫌われてない?」
旬、即答。
「好きすぎて拗らせてる」
間髪入れない。
希、泣き笑い。
「やだ、それ。まだそんなんなの?」
旬がようやく抱き寄せる。
「そんなんだよ。背中向けたのは、顔見たら抱きしめたくなって、意地張ってただけ」
「子どもなの?抱きしめてくれたら良かったのに。」
「ごめん」
少しだけ笑いが戻る。
旬が低く言う。
「二度と“嫌われた?”って言わないで」
「そんな日が来たら俺が先に死ぬ」
「重い」
「本気だよ」
でも声は震えている。
希がぎゅっとしがみつく。
「私、旬に嫌われるの怖い」
「俺も」
やっと対等。
背中じゃなくて、腕の中。
ただ――
抱き合ったまま。
希の顔は旬の胸。
涙がシャツに染みていく。
旬は何も言わない。
ただ、背中をゆっくり撫でる。
一定のリズム。
安心させるみたいに。
希の呼吸がまだ乱れている。
「……こんなふうに泣いてごめん」
小さな声。
旬は首を振る。
「謝らないで」
それだけ。
言葉は短い。
でも腕は離さない。