魔族@純愛#格差&恋愛物語
シオンは、細く長い指を組んで、金のきらめく瞳でイリスを見据えた。

「それも違います。そもそも、古代の神殿では、サキュバスの力を必要としていた時代があるのです」

へ・・・・そんなの知らんぞ・・

イリスの牙が完璧に折られ、ポイッと投げられた・・ように見えた。

「古代、神殿では聖娼と言って、サキュバスを神聖な巫女としてみなしていたのです。

オトコの精気とオンナの精気が混じりあい、生命が産まれ大地に豊穣をもたらす。」

シオンはかごの中にあるりんごを取り、イリスの前に置いた。

「もし、あなたが邪悪な存在なら、結界に阻まれてここまで来ることはできなかったはずです。

あなたが今、ここにいるという事は、神殿巫女として認められたということでしょう。」

神殿巫女・・って、誰と何をするんだ?

考え込んでいるイリスを見て、シオンは微かに微笑んだように見えた。

「それだけではない、あなたとアクア殿は、このフェアリー領に、新しい活力を生み出したと聞いています。

それも、巫女の豊穣の力ではないかと。そう私は思っています」

「あの・・じゃぁ、許可を・・」

イリスは勢いが抜けていたが、何とか最後のダメ押しをした。

「それは、できません。神殿の絹、繭は聖別されたものなので」

そう言うと、シオンは立ち上がった。

「それでは失礼します。帰りの道はカーチャに案内をさせます」

すいっと、風になびくように長衣がひるがえると、ふわりと月桂樹の香りが立ち上がる。

負けた・・・撃沈。

つけ入る隙を、まったく見せなかった。

イリスは放心したように、シオンの立ち去る姿を見送った。
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