魔族@純愛#格差&恋愛物語
「へーーー、甘味なんて、はちみつくらいしか知らんかった」

イリスはクッキー生地で乾いた口を、ブラックコーヒーで潤してから、最後のモンブランに取り掛かった。

「はちみつも花の種類で、色、香り、味も違うのです。
神殿でも蜜蜂を飼っているのですよ」

「でもさ、甘いのって、だいたいみんな同じじゃない?」

栗の風味と生クリームの絶妙な味わいを、楽しみながらイリスは言った。

料理も、魔族はおおざっぱな味付けだが、フェアリーは繊細さにこだわる。

「いいえ、それぞれ違います。
樺の樹液から取れるシロップもありますし、ステビアという草は食べると甘いのですよ」

「へーーー、ふーーーん」

空の皿を前に、満足げなイリスを見て、シオンは金の瞳を細めて、笑顔を見せた。

「シオン様は甘党なの?」

「いただくのは疲れた時くらいですね。チョコレートと薬草リキュールが合います」

「アタシはチョコレートとブランデーがいいと思う」

イリスは籠から卵のチョコレートを、ひとつかみ、テーブルの上に出した。

「そうだ。これをどうぞ」

シオンは受け取るかどうか、躊躇、いや困っているような表情をしたので、

「遠慮しないで!!持って帰って食べなよ!!」

イリスの強引なおばちゃん口調に、シオンは苦笑して、ポケットからハンカチを取り出してチョコレートを包んだ。

「ありがとう」

「いやぁ・・・こっちこそ、おごってもらってありがとうデス」

イリスがぺこりと頭を下げたので、シオンもつられて微笑んだ。

会計が終わると、シオンは帽子を深めにかぶり、眼鏡をくいっとあげて

「さぁ、お家に行きましょう」

そう言ったが、何かを思いついたようで、立ち止まった。

道端の生垣にある枯れたつるを取り、輪にしてイリスの首にかけ、片膝をついて、そのつるに指をからませた。

シオンの指の触れたつるからは、みずみずしい緑の葉と白い小花が次々を出てくる。

「年越しの儀式では、祝福の時に、子どもたちはこうした花輪を首にかけるのです」

シオンは金と緑の瞳を細くして、満足げにうなずいた。

「さぁ、行きましょう」

そう言うと、シオンはイリスの小さな手を握り、歩き始めた。
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