天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
「この前お世話になったので、奢ってもらわなくても大丈夫です。どうぞ」

「ありがとう」

 先生は私のお弁当から卵焼きを箸でつかみ、そのままパクっと食べた。
 ちょっと反応が気になる。
 まずい、とか思ってるかも。

 チラッと先生を見ると
「うまい」
 そう言って、フッと笑ってくれた。

 風見先生でも、病院の中でこんな優しい顔してくれる時があるんだ。

「気を遣わせちゃってすみません」

「いや。お世辞じゃない。俺、甘い卵焼きが好きなんだ。だからめっちゃ好みの味だった。また作ってほしい」

「はいっ?」

 先生、普通に<また>とか言っているけれど、先生とのお昼がこれからも続くの?

「風見先生なら、他にもっと良い人がいますよ。料理上手で可愛くて、頭が良くて。彼女ができたらその人に頼んでください」

 先生のスペックなら、すぐに恋人候補くらい見つかるよ。私なんかじゃなくても。

「この前も言ったけど。俺は光藤さんが良いんだ。俺なりに認めてもらえるよう頑張るよ」

 先生はサラっと重い言葉を伝え、自分のお弁当を食べ始めた。
 先生の言葉にどんな反応をしたら良いのかわからなくて、私も自分のお弁当を無言で食べる。風見先生とご飯を食べる光景なんて、想像もしたことなかったな。

・・・ーーー・・・
「えっ。風見先生が誰かとご飯とか、珍しくない?はじめて見たかも。いつも医局で一人で食べてるイメージなのに。誘っても断られるから。みんな誘わなくなったよね。宮下さんには心開いているみたいだったけど」

「今のお気に入りの子らしいですよ。風見先生だから、いつ飽きるかわからないですけどね」

 ムカつく。どうして私があの席に座ってないの?
 なんで私が席を外してなんて言われなきゃいけないの。
 あの子のどこが良いんだろう。特別可愛くもないのに。あの服装、事務の人間だよね。どうやって風見先生に取り入ったんだろう。
 私でさえ、プライベートなことは何も教えてはくれない。
 仕事上はかなり気に入ってくれてるって自信はあるのに。彼のスペースに入り込むことができない。
 看護師として、彼のことを一番見てきたのは私だ。支えてきたのは私なのに。どこがあの子より劣っているんだろう。
 ああ、とにかくイライラする。

 事務所の人間なんて、どれだけ現場が大変かわかっていないのに。
 どれほど彼がすごい人なのかも理解していないのに。
 怒りのあまりギリッと噛んでしまった唇から出血し、血の味がした。

 これ以上、先生に近づくのなら私が許さない。

 宮下と呼ばれた看護師は、陰から二人の様子を見つめていた。


・・・―――
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