天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜

心を埋める存在 (風見透空side)

 急患が入りすぎて、今日は光藤さんに会いに行けなかった。
 連絡すらできていない。昨日、あんなことを伝えておいて、言葉だけだと思われただろうか。
 光藤さんにはじめて惹かれたのは、ほんの些細なことだった。
 対応していた患者さんが受付の光藤さんのことについて褒めていて。
 忙しく説明も簡単になってしまう受付が多い中で、彼女は最後まで責任を持って対応する子だと知った。

<この前、おばあちゃんが受付できなくて迷っていた時に、光藤さんって人が手伝ってくれたみたいで。たらい回しにされることも多いのに、あの人はいつも親切なのよね。みんなああいう人だったら良いのに>

<知ってる。私もたまに通院するから、あの子が受付だとラッキーだなって思っちゃうもの。忙しそうで聞きにくいことも、あの子なら丁寧に説明してくれるのよね。人柄が良くて聞きやすいっていうか>

 そんな会話が聞こえてきた。事務室に行く用事があったついでに、興味本位でどんな子かを見に行った。はじめて見た時は、いたって普通の子。清潔感のある、愛想がよい女性。そんな感想だった。
 だけど、彼女が患者さんに、にこっと口角を上げた瞬間、自分の中でビリっと電気のような衝撃が走った。
 可愛い、綺麗だ。
 そんな風に思ってしまった。どうしてこんなにも彼女に惹かれるのかわからない。俺の身体と心が彼女を求める。
 気になり始めてしばらく、噂で彼女には彼氏がいることを知った。
 それはそうだ。彼氏くらいいるよな。
 諦めることができず、密かに思いを抱いていた。

 光藤さんに話しかける勇気もない。まともな恋愛なんかしてこなかった。
 
 俺を必要とする女性は、ほとんど俺の見た目やスペック、容姿に憧れを抱く。告白されるたびに「先生の優しいところが……」なんて言われることが多いけれど、俺は相手に優しくした覚えもない。

 彼女がいた時期もあった。心から愛することができなくて別れた。
 ただ人間の構造上、性欲がないわけではない。
 付き合った女性とはセックスするだけ、若い頃はそんな自分もいた。
 
 あの時、光藤さんと近づくきっかけになったレストランで偶然会った時、話の内容から光藤さんが不倫をしていると知って、勝手に裏切られたと感じてしまった。

 そしてよく彼女の事情も理解していなかったのに
<不倫してたのか?あの母親、もっと強い力で突き飛ばしてたら、転倒して、もしかしたら最悪なことになっていたかもしれない。どうして冷静になれなかったんだ>
 なんて一方的に彼女を責める発言をしてしまった。

 光藤さんが誰かを傷つける不倫をするなんて、考えたくなかったからかもしれない。結果的に彼女は何も知らなくて、巻き込まれた被害者でもあった。
 相手の妻からしてみれば、光藤さんは許せない存在かもしれない。
 だけど一番悪いのは、彼女に嘘をついてまで近づいたあの元カレだと思う。

 彼女にあんな思いをさせて許せない。
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