天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
 昨日は彼女が少しだけ心を開いてくれ、隠していた前世の記憶のことまで話してくれて嬉しかった。
 俺が前世で愛した人に似ているのか。
 それで興奮状態になった時に<捨てるくせに>なんて言ったんだな。

 以前の俺だったらそんな話、信じることはなかっただろう。
 相手が光藤さんだから信じたんだ。
 俺もこんなに不思議と彼女に惹かれている。
 彼女の話を聞いて、もしかして前世で会っているのかもしれない。
 柄でもないが、そんな風にさえ思っていた。

 あー。昼めし食べ損ねた。仕方がないか。
 運ばれてきた患者さん、無事に意識を取り戻して良かったな。

 医局の自分の椅子にもたれ、目を閉じていた時だった。

「風見先生、昨日、一緒にお昼を食べてた子、どんな関係なんですか?」

 この声――。

「宮下か」

 宮下は仕事ができる女性だという認識で、特にそれ以上の感情はない。
 別に近くにいてもそれほど嫌ではないけれど、なれ合ってほしくない。
 オペする時、彼女を指名することが多いのは、彼女の覚えの良さや機転、判断や対応が早いから。話しかけられたら普通に答える。そんな関係。

「どんな関係って。俺が一方的に惚れてるだけだけど……」

「えっ!?」

 宮下は珍しく動揺し、大きな声をあげた。

「なにか問題ある?」 

 疲れてるから、今は話しかけないでほしいんだけどな。

「いつからですか?」

「はっ?」

「いつからあの子のことを……」

 宮下は顔を赤くさせている。

 ああ、この会話、面倒だ。

「宮下に話す必要ないだろ」
 
 俺が話を終わらせたくてそう言い切ると
「あの子。彼氏いますよね。なのに……」
 不機嫌そうに何かを考えている。

「今はいないんだよ」

 なんかムカつくな。

「だったら残念ですね。風見先生。さっき、あの子が院外のベンチで男と楽しそうに話しているの見ましたよ。あの子、見た目は大人しそうなのに、結構男好きなのかも。そんな子に騙された先生、バカみたい」

 光藤さんがそんなことするわけない。

「おい。その男、どんな奴だった?」

「えっ、別に普通って感じでしたけど。短髪で可もなく不可もなく……。そういえば、あの子が名前を呼んでた……。ゆうなんとかって名前に聞こえましたけど」

 それって。元カレじゃないのか!?
 一気に嫌な感じがする。

「そこのベンチどこ?」

「従業員出入口近くの……」

 宮下の言葉を途中まで聞き、俺は自然と走っていた。
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