天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜

俺の彼女

 帰ろうとすると優馬が従業員出入口で私のことを待っていた。
 
 優馬は私がこの病院に勤めているのを知っている。
 なんて声をかけたら良いのかわからない。
 怒鳴りつける元気も今はないし、あんなに大好きだったのに、今は最低な人だという認識。

「優馬、どうしてここにいるの?」

「雫羽。お疲れ様。ごめん。話がしたくて待っていたんだ」

 私は話なんてしたくはない。訴えられている側だ。これ以上、奥さんに勘違いされても困る。

「私、優馬の奥さんに訴えられているの。知っている?だから何かあったら奥さんを通して手紙でもください」

 振り払おうとしたけれど
「知っているよ。そのことも含めて、話があるんだ。ちょっとだけで良い。ここでもいいから、話を聞いてくれないか?」
 
 慰謝料のことで話?奥さんから言われてきたの?

「わかった。そこのベンチで良かったら話を聞く」

「ありがとう」

 二人で距離を取ってベンチに座る。

「雫羽。本当にごめん。俺、雫羽のこと、本気で愛してた」

 何をいまさら言っているんだろう。
 こうでも言っておけば、自分は訴えられないと思っているのかな。
 そうか。自分が私に訴えられると思って、謝りにきたんだ。
 だけどもっと彼から話を聞く必要がある。

「私、あなたが既婚者だって知らなかった。付き合う時だって、将来を見据えてって言ってくれたよね?」

「ああ。言った。本当だった。夏子とは別れようと思っていたから。だけど長い付き合いってこともあって、夏子と別れられなくて。結局、子どもまでできた。子どものエコー写真を見たら、急に父親にならなきゃって思ったんだ。だけど雫羽のことが好きで、結局、どっちとも別れられなくて関係を続けていた」

 なんて都合の良い話なんだろう。私のことが好きだったから別れられなかった?
 嬉しいって感じないよ。

「雫羽。俺、やっぱり雫羽のことが好きだ。夏子とは別れるから。付き合ってくれ」

「はっ?」

 そんなこと、言われるとは思わなかった。
 ていうか、今さらそんなことを言われても。

「奥さんがいるんでしょ。それに赤ちゃんも。付き合うことなんてできない。私、もう優馬に気持ちはないよ。あんな酷いことされて、また好きになれない」

「ごめん。辛かったよな。夏子から請求されている慰謝料は、俺が支払うから。赤ちゃんのことは今後考えていく。生むなとも言えないし。今、夏子がすごく機嫌が悪くて。妊娠してからそうなんだ。だからもうあんな家に帰りたくなくて。雫羽の家に泊めてほしい。俺は雫羽と一緒にいた方が心が休まるんだ」

 どうしよう。呆れてものが言えない。
 こんな無責任な人だなんて思わなかった。
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