天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
「先生。私、また倒れたんですか?」

「ああ。精神的な負担のせいだと思う。一応、水分足りてなさそうだったから点滴したけど」

 風見先生は
「もうすぐ終わるな」
 そう言って
「少しチクッとするぞ」
 続けて、腕から針を抜いてくれた。

 あれ、こんなに痛くなかったっけ。
 こんなに注射を抜く時、痛くなかったのははじめて。さすが風見先生なのかな。

「痛くなかったです。さすがですね」

 私が感想を伝えると、先生は瞳を大きくさせ、フッと笑ってくれた。
 笑顔、カッコ良いかも。
 まだぼんやりしているけれど、そんなことを思ってしまう。

「何があった?話せるか?」

 そうか、先生は事情を知らないのか。

「帰ろうとしたら、元彼が出口にいて、それで……」

 私は優馬から言われたことを隠さずに先生に話をした。

「呆れたやつ」

 風見先生はふぅと息を吐く。

「風見先生が来てくれて良かった。ありがとうございました。でもこの部屋、使って良かったんですか?半日入院とかだけでもかなり高い病室ですよね。私、払えるかな」

 給料の天引きとかにはならなそう。自己負担かな。

「いや、費用の心配はいらない。俺の指示だから。請求されたら俺が払うし、どうにかする。だから心配するな」

 そう言って、先生は私の頭を撫でた。そういうわけにはいかないけれど。
 どうやってこの部屋を手続きしたのかとか、わからない。
 先生に任せた方が手続きとか楽なのかな。

「だったら今度、お礼します。何がいいですか?私のできる範囲で」

 風見先生にはこの間ご馳走になったばっかりだし、今日だってこんな迷惑をかけちゃった。さすがに何かしなきゃ。

「いや……」と言いかけ
「今度の休日、光藤さんと外出したい」
 ボソッと呟いた。

 外出?つまりはそれって。

「あの、それってデートってことで合ってますか?」

「そう」

 目線を逸らした先生は、少し照れているみたい。
 いつも堂々としているのに、デートって言っただけで子どもみたいになっている。可愛いところもあるんだ。

「わかりました。先生が望むのなら」

 断るわけにもいかないよね。

 私の返事を聞き
「一日一緒だからな」
 口に手を抑えながら、顔を赤くしている。

「はい」

 いつももっとすごく恥ずかしいセリフを言うのに、風見先生がテレてしまうツボがよくわからない。あまりに見慣れない姿に、ハハッと笑ってしまった。

「光藤さん、ごめん。今日、俺まだ帰れそうにない。タクシーで帰れ。呼ぶから。明日の出勤も無理するな。身体、平気そうだったら大丈夫だけど。俺、明日勤務だから。仕事中具合悪くなったらすぐ相談して」

 ずるいけど、頼りになる。

「ありがとうございます」

 先生はタクシーに乗る私を見届けてくれた。
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