天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
 先生は疲れているのに景色の良いところを走らせてくれ、車中は無言が続くこともあったけれど、居心地が悪いわけではなかった。

 綺麗だ。
 とくに海沿いの景色は心が弾む。

「飯とか食べる?」

 もうこんな時間。だけど奢ってもらうわけにはいかない。

「奢ってもらうの申し訳ないとか考えるなよ。俺がどのくらい稼いでいるか、だいたい知ってるだろ?」

「えっ」

 先生に感づかれた。

「私は総務じゃないので、先生のお給料は知らないです。だけどかなりすごい額だと思います」

 天才外科医だと言われ、引っ張りだこの先生だもん。
 テレビの取材とか前に受けていなかったっけ。
 それに業務が過酷なことは理解できるし、VIPルームに泊まる患者さんは有名人が多くて、風見先生を指名してくるってことも聞いたことがある。

「だったら気にするなよ」

 うーん。そんなこと言われても。

 悩んでいると
「だったら作って。ご飯」
 信号で止まったタイミングで見つめられた。

 ご飯を作れ?

「私のご飯なんかで良いんですか?」

「俺は光藤さんの作ったものが食べたい。弁当、お世辞じゃなくて美味かった」

 私のご飯で良かったら作るけれど。
 風見先生を家に呼ぶ?あの狭い家に?
 どうしよう。部屋、片付いてないよ。

 さらに頭を悩ませていると
「何もしないから、光藤さんの家、行きたい」
 ボソッと風見先生が呟いた。

 何もしないって。それはそうだ。男の人を部屋に呼ぶって、大人なんだからそういう可能性も考えなきゃいけないよね。

「散らかってますし、狭いけど良いんですか?汚いとか、文句言いませんか?」

「はっ?俺がそんなこと言うように見える?」

 目つきが鋭くなった先生だったけれど、見えてしまうんだから仕方がない。
 冷蔵庫に何があったかな。

「先生、何か食べたいものありますか?」

「オムライス……」

 小声だったけど、聞き取れた。
 また卵料理?でもいいか。先生が食べたいって言ってるんだから。
 オムライスくらいは作れるな。

「わかりました」

 私は先生と一緒に帰宅をすることになった。

 アパートに着き、先生を部屋に案内する。

「お邪魔します」

 靴、きちんとそろえて脱いでくれるんだ。
 そんなことを思いながら、一つしかない部屋へ案内する。

「どうぞ。汚いけど」

 私は先生にソファに座ってもらった。

「別に散らかってないじゃん」

「先生の部屋に比べれば、ごちゃごちゃしているので」

 そんなにきちんと見たわけじゃないけれど、先生の部屋は物が少ないイメージ。

「俺は光藤さんの部屋、落ち着くけど」

 はっきり狭いとか言われるかもと思ったけど、先生は文句一つ言わない。

「座ってゆっくりしててください」

 私は先生にとりあえずお茶を出し、希望を受けたオムライスを作ることにした。
 しばらく調理をしてスープを作ろうと思い、嫌いなものはないか風見先生に聞こうと思い、部屋に戻る。

「せんせっ」

 声をかけようと思ったけど、先生を見て声を出すのをやめる。
 先生、寝てる。まるで息をしていないかのように、しっかりと寝ていた。
 先生、疲れてるよね。昨日だって帰るの遅かったみたいだから。

 そっと彼にブランケットをかける。
 それにしてもまつ毛、長い。肌も綺麗。髪の毛は艶がある。

 風見先生って、こんなにイケメンだったっけ。
 私がきちんと先生を見ていなかったからかな。
 性格が冷たいって言われていても、モテる理由がわかる。
 寝ているレアな姿、もっと見ていたい気がするけれど。

 起こさないようにそっとダイニングへ戻った。
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