天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
「いただきます」

 私の部屋で風見先生と一緒に食事するなんて想像もしていなかった。
 けれど私のとなりには今、風見先生が私の作ったオムライスを食べている。不思議。

「美味い」

「良かったです」

 味が大丈夫か緊張してしまったけれど、食べ進めてくれているし、良かった。美味しいって言って食べてくれると嬉しい。

「ごちそうさまでした」

 先生は食器をキッチンまで運んでくれる。

「いいですよ。私、やるので」

「運ぶだけならいいだろ」

 そういえば
「先生、ランチボックスまで洗ってくれてありがとうございました」
 お礼を言うの忘れてた。

 さっき返してもらった時に見たら、綺麗に洗ってくれてあった。

「当たり前だろ」

 先生にとっては当たり前なんだ。

「一緒に洗うよ」

「いいです。私がやるので大丈夫です」

 強引かもしれないけれど、先生にはリビングへ戻ってもらった。

「なんか、帰りたくなくなる」

 先生がソファに座り、ボソッと呟く。
 こんな狭い部屋なのに、気に入ってくれたのかな。
 風見先生には不釣り合いな部屋だけど。

「光藤さん、今度またご飯作ってくれる?美味しかった」

「はい。あんなので良ければ」

 風見先生は私の頭をくしゃっと撫で回し
「夜も遅いから帰る。何かあったら連絡しろよ」
 そう言って立ち上がった。

「はい」

 駐車場まで送って行こうとすると
「ここでいいから」
 玄関先で暗いから外に出るなと言われた。

「ありがとう。今度の休日、楽しみにしてるから」

 先生はクルリと私の方を振り返り、ギュッとハグしてきた。

「充電」

 耳元で先生の声が響く。

 硬直している私に「またな」と言い、風見先生は帰って行った。

 風見先生が帰ったあと、先生と一緒に座っていたソファへ一人で座る。
 さっきまでここに風見先生がいたなんて、いなくなってしまえば夢のようだ。食器は二人分片づけたから、夢じゃないんだよね。

 私、元カレと別れてまだ時間が経っていないのに、風見先生のペースに巻き込まれている。たぶん、惹かれていると思う。あんなに積極的に好意を伝えてくる男の人ははじめて。
 それになんだかんだで風見先生には助けられている。身体も精神的にも。
 だけど、これ以上の感情を抱くのが怖い。
 また簡単に捨てられるんじゃないかとか、実は他に好きな人がいるんじゃないかとか、好きになったら飽きられちゃうんじゃないかとか、自分が傷つくのが怖い。
 苦しい感情を覚えている。好きになってあんなに悲しくて苦しくて辛い想いをするんだったら、最初から感情を抱かない方が良い。

「はぁ」

 風見先生のあのテレている顔とか、可愛いんだよな。
 先生との約束はちゃんと果たす。デートはするけれど、その先どうなるんだろう。
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