天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜

好きな子以外 (風見透空side)

・・・―――

「風見先生、良かったら食べてください。差し入れです」

 光藤さんの家で夕食を食べた次の日、あまり関わりのない看護師にランチボックスに入った食べ物らしきものを渡されそうになった。

「ごめん。俺、外食以外、他人が作ったものを食べられない性格だから」

 受け取る前に気づいて良かった。

「そう……。なんですか。すみませんでした」

 看護師は軽く会釈をし、離れていく。
 簡単に諦めてくれて良かった。

 休憩時間に医局で光藤さんとどこに行こうかスマホで検索をしていると
「あれ。あの子のは食べないんですか。あの子、料理が上手で有名なのに。私たちもよく差し入れもらってますよ」
 関わりのある看護師の宮下が話しかけてきた。

「食べない。生理的に受け付けないから」

「えっ。でもこの間は、事務員の子のお弁当食べてましたよね?」

 見られてたのか。気づかなかった。

「あの子は例外。好きな子の弁当は喜んで食べる」

 俺が誰に惚れようが、関係ないだろ。

「本気であの子のこと好きなんですか?」
 
 ああ、答えるのが面倒になってきた。
 もともとプライベートなことを話すのは苦手だ。話したいとも思わない。

「そうだけど。今、忙しいから話しかけないでくれ」

 貴重な休憩時間なんだから。

「っ……!わかりました!」

 宮下は不機嫌そうに離れて行く。

 光藤さんの弁当も夕食も美味かった。なんか、懐かしい味がしたんだよな。はじめて食べたのに。

 それにしても光藤さんの家で見た夢が最悪だった。
 一瞬、寝ぼけて現実かと思ったけど違った。そもそも夢に出てきた俺の好きな子は光藤さんじゃなかった。雰囲気と容姿がすごく似ていたから一瞬焦ったけど。
 だけど、どうして<好きな子>なんて咄嗟に言ってしまったんだろう。夢の中の話だから別にいいか。

 彼女から最初は嫌がられていた印象もだんだんなくなり、心を開いてくれている印象がする。
 少しずつでいい。焦らず俺に興味を持ってもらえればいいのに、どうしても焦ってしまう自分がいる。
 恋愛の駆け引きは、苦手かもしれない。

・・・―――
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