天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
「それは辛かったな。そこまで鮮明に覚えてるのか。さぞ、無念だったろうに。苦しいことを聞いて、悪かった」

 否定することなく、謝ってくれる。

「あの。信じてくれるんですか?」

「ああ。光藤さんだから。信じるよ」

 はじめてだ。前世の記憶をこんなに話しても、真剣に受けとめてくれる人。大抵は途中で薄笑いされたり、否定されたり、はいはいの一言で終わってしまったのに。

「嬉しいです。はじめてです。こんなこと、ちゃんと聞いてくれる人。この前も言いましたけど、風見先生は絶対信じてくれないかと思ってました」

「光藤さんだから信じるんだ。好きな相手のことだったら、信じるだろ」

 風見先生はいつも真っすぐに私の心に飛び込んでくる。
 駆け引きなんかしないで、一直線に入り込まれる。こんな男性もはじめて。

「ありがとうございます」

 自然と口角があがる。先生は私を見て
「……。光藤さん。その顔、他の男の前ではするなよ」
 変なところで嫉妬心を燃やされた。

「今度の休日、夜まで大丈夫か?」

 そうだ。今度の休日は風見先生とデートの予定なんだ。

「はい。次の日休みなので、大丈夫です」

 夜までって、夜遅くなっても大丈夫ってことだよね。

「そっか。わかった。楽しみにしてる」

 先生とのデート、どうなるんだろう。

 当日――。
 今日は先生とデート当日。私はいつもの休日より早く起き、髪の毛を巻いてみたり、メイクを仕事の時よりは濃くしたり、一応、先生に失礼のないように容姿を整えようと頑張ったつもりだ。

 先生から<ついた>というメッセージがあり、鏡を一度見て、アパートを出る。

「お待たせしました」

 先生の車を見つけ、助手席に乗った。

「お願いします」

 チラッと先生を見ると、いつもの先生とは違う。髪の毛はワックスでオシャレに少しはねていて私服もカジュアルだ。

「いつもと雰囲気が違いますね」

 風見先生に声をかけると
「光藤さんもな」
 そう言われた。

「変ですか?」

 思わず聞いてしまったけれど
「いや。変じゃない。可愛い」
 ボソッと小声で呟く風見先生に、可愛いなんて言われたから、聞いておいて私も恥ずかしくなっちゃった。

 思わず下を向いてしまうと
「行こうか?」
 先生がエンジンをかけた。

「どこに行くんですか?」

 そう言えば行き先とか予定、全然聞いていない。

「水族館……」

「水族館ですか?」

「いやか?」

 風見先生と水族館って、本当にこれはデートなんだ。想像できなくて、水族館に行くなんて言われると思っていなかった。

「水族館、行きたいです」

 動物は好き。水族館なんて行くの久しぶり。自然と笑みを浮かべてしまうと、先生はコクっとうなずいてくれた。
 水族館、混んでるかな。今日は休日だから家族連れとかも多そう。入場制限とかあるかな。
 そんなことを考えていた時
「光藤さん。今日は俺のこと、風見先生って呼ぶなよ」
 全く予想していなかった言葉をかけられた。

「えっ?」

 風見先生を風見先生って呼んじゃいけないの?
 じゃあ、必要な時、どうすればいいの?

 そうか。お客さんとかの前で<先生>って呼ばれるのが嫌なんだ。

「わかりました。《《風見さん》》」

 先生の要望に答えてみたが、風見先生から「はぁ」とため息を漏らされた。

「えっ。違うんですか?」

「違う。名前で呼んで」
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