天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
「先生こそ、お疲れ様です」

 私なんか最初硬直しちゃったのに。

「先生、さすがでした。かっこ良かったです」

 対応力と適切な判断、プライベートでもすぐに適応できちゃうんなんて。
 相当緊急の場をこなしていなきゃできないよ。

「いや。雫羽もよく頑張ったな。結構吐血してたから、心配だったけど。サポートありがとう。あの男の子のケアもしてくれたから、助かった」

 すごいなと微笑んでくれた。

「それに、雫羽。俺のこと褒めてくれてたよな。すごいお医者さんなんだよって。あれ、マジで嬉しかった」

「えっ、聞こえてたんですか?」

 先生に聞かれてるなんて思わなかったよ。恥ずかしい。

「少しは俺のこと、認めてくれる?」

「認めるもなにも。医師としては最初から尊敬してますよ」

「男としては?」

 いつも質問がズルい。

「……。かっこ良かったです」

 お世辞じゃなくて、本当にかっこ良かった。
 この人が近くにいてくれたら安心なんだろうなって感じちゃった。

 一瞬、血を見て動けなくなっちゃった時も私のことを支えてくれて、相手が風見先生じゃなかったら、きっとあのまま震えて動けなくなっていたと思う。

「……。良かった」

 風見先生は満足そうに呟いた。

「ていうか、雫羽。もう現場じゃなくなったんだから、先生呼び禁止」

「あっ。はい。すみません」

 まだ名前で呼ぶのが慣れていなくて、風見先生って呼んじゃってた。
 下の名前で呼ぶ約束だったのに。

「救急車に乗ってきちゃったから、車を取りに行かないとな」

 そうだ。車、まだショッピングモールの駐車場に停めたままだ。

「雫羽。ちょっときて」

 透空さんに腕を引かれた。

「どうしたんですか?」

 透空さんは自分の上着を私に羽織らせる。
 寒くなんかない、私だって上着を着ているのに。

「寒くないですよ」

「いや。着て」

 上着、大きい。透空さんの香水の匂いする。なんかドキドキしちゃう。

「電車とか徒歩は怠いから、さっきの場所までタクシー呼ぶから」

 病院の駐車場にはタクシーは停まっていない。
 透空さんはアプリを使って、タクシーを呼んでいるみたいだ。
 今日はプライベートだから、いつもと違う環境であんなことがあって疲れるよね。私だって緊張しちゃった。透空さん、私とデートなんかしてないで、休んだ方が良いんじゃないのかな。

「すぐタクシー来るって」

「はい」

 その時、私に羽織らせてくれた上着がずり落ちそうになり、慌てて上着を掴んだ。

「あっ」

 思わず声をあげてしまったのは、私の上着に血がついていたからだ。さっきの患者さんの血だ。気をつけなきゃいけなかったのに。
 付着していたのが少量だったから、トラウマを思い出すことはない。
 
「透空さん、すみません。だから上着を貸してくれたんですね。言ってくれれば良かったのに」

 これじゃあ、先生の上着、汚しちゃうかもしれない。クリーニングをして返せばいいかな。

「いいよ。これからタクシー乗るから。隠してな。少量だし、運転手もよく見なきゃわからないだろうけど」

「すみません。クリーニングして返します」

「いいよ。気にしなくて」

 私が気がつかなかったら、そのままだったのかな。
 私が血を見ないようにしてくれたんだ。
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