天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜

遠い約束

「んっ……。んんっ……」

 今、私、透空さんとキスをしている。激しい。
 彼が私を心から求めてくれている、そんな情熱的で熱くて酸素が足りなくなるようなキス。いつの間にか押し倒されているけれど、怖くはない。

「はっ……」

 舌の感触が気持ち良くて、彼のキスに応える余裕はない。
 私、透空さんとのキス、嫌じゃないかも。

「んっ……。透空さん、変なことはしないって……」

 これ以上はまずい。
 透空さんとは、中途半端な関係にはなりたくはないよ。

「……。ごめん……」

 透空さんは息を吐き、私に謝ってくれ、キスを止めてくれた。
 そして私に背中を向けている。

「俺のこと、怖くなった?嫌いになった?」

「えっ」

 うつむいている透空さんの声に元気がない。
 きっとキスをしたことを後悔しているのかな。

「嫌いになっていません。怖くもありません。かと言って、続きをしたいとは……。今は思えません。ごめんなさい」

 透空さんとは真正面から付き合っていきたいから。
 彼に惹かれている私がいる。それは本当のこと。だからといって、今は抱いてほしいという気持ちにはなれない。

「良かった。嫌われてなくて」
 
 さっきから、はぁと息を吐く彼は、起きてから様子がおかしい。
 そんなに嫌な夢を見たんだろうか。
 私も前世の夢を見ると、気分が悪くなるから、透空さんの気持ちはわかるけど。

 彼の背中をトントンと叩き
「透空さんでも怖いものってあるんですね」
 私は彼との会話を求めた。

「そうだな。本当に嫌な夢……。だった」

 そう言って、考え込むように目線を下げた。

「雫羽も……。その……。前世の夢とか見るのか?」

 珍しい。透空さんから前世のことを聞いてくるなんて。

「はい。見ます。そういえば、最近は減った気がしますけど」

 忙しいからかな。
 アニル様に似ている透空さんがこんなに近くにいるのに、思い出す機会が減っている。良いことかもしれない。

「そっか」

 彼は一言そう呟くと
「今日の夕ご飯は、雫羽が作ったものが食べたい」
 フッと笑い、何か作ってとお願いをしてきた。

「はい。私の作ったもので良ければ。何が食べたいんですか?」

「そうだな」

 何がいいかと考えている彼は、いつもの透空さんに戻ったみたい。
 さっきまで顔色も悪かったから。
 やっぱりメンタルの切り替えとか、上手なのかな。
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