天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
「いただきます」

 姿勢を正し、両手を合わせ、透空さんは私が作った夕ご飯を食べ始めた。

 ちょっぴり緊張しちゃう。

 透空さんの様子を伺っていると
「だし巻き卵、すごく美味い。弁当の卵焼きも美味かったけど。それに他のおかずもどれも美味しい。ありがとう。好きな子に夕ご飯作ってもらったの、初めてだ」
 さりげなく告白してくれた。

「お口に合って良かったです」

 美味しいって言って食べてもらえるのは嬉しい。

「こんなに美味しいご飯なら、毎日食べたくなるな」

 思わず、ご飯をのどに詰まらせそうになった。

「褒めすぎです」

「いや、本気」

 間を開けず返答され、何も言えなくなる。
 
 ご飯を食べ終え、そろそろ約束していた<夜まで一緒>という任務は果たせそうだ。食器を洗い終え、リビングにいる透空さんに話しかける。

「透空さん。そろそろ帰りますね。今日はありがとうございました。楽しかったです」

 ソファに座っている彼が、手招きをしている。なんだろう。
 透空さんの近くに行くと
「きゃあ!」
 思いっきり手を引かれ、彼の膝の上にうまく座らされバッグハグの態勢になってしまった。

 ギュッとうしろから抱きつかれる。
 透空さんの香水の匂いがわかるくらい近い距離。

「あの……」

 拒むこともできないし、どうすればいいんだろう。
 透空さんの顔も見えないから、考えていることもいつも以上にわからない。

「もっと一緒にいたい。だから離さない」

 私の首筋に彼の息があたる。
 いつもより低い声に、ゾクッとなりながらも
「あの。えっと」
 歯切れの悪い返事しかできない。

 ちょっと身体を動かしてみたけれど、腰をしっかり支えられているから動けない。

「また会えますから。今度は遊園地に行きましょう」

 透空さんとこれから会えなくなるわけじゃない。
 病院の中でだって会えるし、今日約束した遊園地だって都合が合えば行くつもりだ。
 私が答えても何も言ってくれない。

 うーん。どうしたらいいんだろう。

「透空さん?」

「……。俺のこと、ちょっとは好き?一緒に居たいって思ってくれた?」

 珍しく、自信なさげだ。

「信用してますよ。一緒に居ても怖くなくなりました。頼りになるって思います。今日の透空さん、カッコ良いって何回も思っちゃいました」

 お世辞じゃない、私の気持ち。

「そっか。良かった」

 透空さんはそう言ってくれたけれど、抱きしめられたままの状態が続く。
 大きな手。そっと私の腰にある透空さんの手に触れてみた。
 上から重ねるように手を置くと、少しだけ彼の手が動いたのがわかる。

「雫羽の手、小さいな」

「透空さんの手が大きいんですよ」
 
 私は諦めて、身体を楽にした。
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