天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
 気づけば、食事会当日になっていた。
 透空さんは<出席する>なんてお昼にもメッセージが届いていたけれど、本当に来るのかな。
 私は一足先にホテル会場に向かい、準備をしていた。
 料理とかはホテルのスタッフさんが運んでくれるけれど、席札とか、それにミニゲームの準備とかで、結構忙しい。
 三人の先輩と慌てて準備をし、なんとか開場時間までに間に合った。

 受付でくじを引いてもらい、席を案内する。
 見たこともないスタッフさんも多いな。欠席の人も半数近くいたけれど、私は事務員だし、関わりがそれほどない医師や看護師もこんなにいるんだ。

「お疲れ様です。どうぞ、ここから引いてください」

 顔も見ず、くじが入った箱を持ち上げた時だった。

「お疲れ様です」

 この声、宮下看護師だ。透空さんのことを気に入っている人で、ケンカを売ってくる人。

 一瞬、ヒヤッとしたけれど、周りに人も多かったからか、嫌味を言われることなく、彼女は席に着いた。

 そろそろ食事会がはじまる時間。
 だけど、透空さんの姿はない。

 私もくじを引き、番号が書いてあるテーブルに向かう。

「あ、お疲れ様」

 私に声をかけてくれたのは、高木恵(たかぎめぐみ)先生だ。
 透空さんと同じ外科医で、この間、医局に行った時に案内をしてくれた人。
 高木先生は風見先生と同じくらいの歳で、物腰も柔らかいからスタッフには人気。それに身長も高いし、目鼻筋は整っていて、イケメンだって騒がれている先生の一人。

「お疲れ様です。となり、失礼します」

 私が席に着くと
「風見先生はね、行くって言ってたけど、急患が入って対応してたからたぶん難しいと思うよ」
 高木先生にこそっと耳打ちされた。

 私に透空さんの話をしてくるってことは、高木先生は私たちの関係について知っているの?

「そうですか」

 返事をすると
「あれ?やっぱり寂しい?」
 高木先生がチラッと私の顔を覗き込んだ。

「いえ。忙しい人ですから。仕方がないですよね」

 それにこんなに広い会場だから、席が近くなる可能性も少ない。
 透空さんが来ても、話すことなんてほとんどないと思う。

「俺で良ければ、お話しよう?」

 高木先生が私の方を見つめている。

「せっかく席がとなりになったんだから。俺、雫羽ちゃんに聞きたいことたくさんあってさ?」

 あれ。雫羽って、私の名前を知っているんだ。
< 53 / 55 >

この作品をシェア

pagetop