天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
「どうして名前知ってるの?って顔したね。よく風見先生と残業するんだけど、あいつたまに電話に行くんだよ。相手はもちろん雫羽ちゃんね。電話、ちょっとは聞こえてくるから、名前覚えちゃった。噂の彼女だって有名だよ」

 透空さんが電話をくれる時、まだ仕事中って言っている時もあるから。
 やっぱり聞こえちゃうよね。
 それにたぶん医局だと有名なんだ。

 透空(本人)さんが気づいていないだけで、周りは知ってるんだね。

「風見先生のどこが好きなの?」

 コソッと高木先生は聞いてきた。
 どこが好きか。たくさん良いところを知ってるけれど、風見先生の押しに負けてしまって付き合ったっていうか。

 だけど
「頼りになって、こんな私を理解してくれるところです」
 前世の記憶があるとか、元カレに騙されて訴えられているとか、透空さんにとってはプラスにならないことばかりなのに、受け容れて支えてくれる。
 今では大切な人。

「へー。頼りになるってところは、まぁわかる気がするけど。あの風見先生が患者さん以外の女の子を理解しようとするなんて。見たことないよ。面白いな」

 くくっと、高木先生は笑っている。
 高木先生とこんなにたくさん会話をしたのは、はじめて。噂通り、なんか柔らかい雰囲気で話しやすい人だ。

 食事会がはじまり、院長長や部長の軽い挨拶が続く。
 今日はラフなイベントだから、お酒を飲んだり、ご飯を食べたり、他部署の人と交流を目的としているから、堅苦しくなくてその辺は楽だな。

 そろそろゲーム大会の準備をしようと席を立とうとした時だった。

「風見先生と付き合ってるんですか?」

 あぁ、この声。宮下看護師だ。

「はい。付き合ってますけど」

 私の返答にキッと鋭い眼光で
「風見先生は今、とても大事な時期なんです。邪魔しないでくれませんか?」 
 邪魔をしないでくれとは。この人も酷い言いようだな。

 私は透空さんにとって邪魔な存在になるのかは、彼が決めることなのに。

「どうしてあなたにそこまで言われなきゃいけないんですか。風見先生に憧れているからって、そんな態度だったら、先生に嫌われますよ」

 この間、宮下さんは風見先生から注意を受けたばかりなのに。
 まだ反省していないのかな。

「風見先生と付き合っているからって、いい気になってるんじゃないわよ。この出来損ない!先生の補助もできないのに!」

 出来損ないって、私が看護師として働けなくなってしまったことを言っているんだ、きっと。その通りだけど、私、この人に負けたくない。前世で虐げられてきたから、今世では自分を曲げないって気持ちが強くなっているんだと思う。

「風見先生から女性として気に入ってもらえたのは私です。文句があるなら、私じゃなくて風見先生に直接言ったらどうですか?」

 宮下看護師の顔が赤くなったのがわかった。
 気持ちが高ぶって、興奮しているんだろう。悪い意味で。
 ひしひしと宮下さんの怒りが伝わってくる。
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