天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
 お店に着き、私はまたも透空さんに持ち上げられ、靴売り場の椅子に座らされた。

「これでいい?」

 透空さんが選んでくれたのは、ヒールが高くはない歩きやすそうな黒のパンプス。

「はい」

 試着してみたけれど、ちょうどぴったりのサイズ感だった。

「ちょっと待ってて」

 透空さんは私を残し、靴を持ってどこかに行ってしまった。
 ポンと一人取り残されたが、すぐに帰ってきてくれ
「店員に事情を話してきた。会計は済んでるから、ここから履いてもいいよ」
 しゃがんで私に靴を履かせてくれた。

「ありがとうございます」

 透空さんって行動力ある。すごい、頼りになる。

「ついでに一階で飯買ってもいい?」

「はい。どうぞ」

 そう言えば、親睦会ギリギリに来た透空さんは何も食べていないんだ。
 お腹も空くよね。

「雫羽。食べたいものある?甘い物とか?」

 食料品コーナーで彼のうしろを歩いている時、たずねられた。

「いえ。私はさっき食べたので」

「《《俺の家》》で食べたいものとか、飲みたい物あったら買って」

「はい。って、俺の家とは……?」

 今日の夜、透空さんの家に行く約束はしてなかった気がする。

「明日、デートの予定だったろ?今日、なんとか帰れたから。このままずっと一緒に居てもらう。雫羽は俺の家に泊まるの」

 そんなっ、準備とか何もしていない。

「あの、着替えとかは?」

「ここで買えばいいだろ?それか、一回アパート帰って準備する?俺はどっちでもいいけど。買うなら全部俺が出すから」

 ああ、どうしよう。これは逃げられない。

「あの、じゃあ一回アパートへ……」

「俺の《《彼女》》なんだから、部屋着とか下着くらいあってもいいか。また来るんだから。雫羽、今日ついでに好きなの買って」

 新しい物を買うお金がもったいないと思って、アパートに一旦帰ろうとしたけれど、透空さんはきっと着替えくらい俺の家へ置いとけって言いたいんだよね。

 彼女、か。まだ響きになれない。
 だけど、部屋に入れてくれるところとか、荷物を置いていいって言ってくれるってことは、私のこと本当に彼女だと思ってくれているって前向きに捉えた方が良いよね。
 今考えると優馬は付き合った当初だけ、家に二度しか呼んでくれなかった。あの辺からおかしかったのかな。

「どうした?」

 考え込んでいる私に、透空さんが声をかけてくれた。

「透空さんは、浮気しないんだなって。私の荷物とか置いてもいいよって言ってくれたり、今日だって急なのに家に泊めてくれようとしたり」

「はっ?浮気なんかしない。雫羽、面白いな。今、そんなこと考えてたの?浮気するとか思われてたら、嫌だけどな」

 夜間でもお客さんが多いざわざわとした店内、透空さんは私を引き寄せ
「今日、高木にだっこされてただろ。あれ、かなり妬けた。俺以外の男に触れさせたってことで、今日はお仕置きだから」
 ぼそっと耳の近くで囁かれる。

 だからあんなに透空さんは機嫌が悪かったんだ。
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