天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
一か月後――。

「えっ。今日これからですか?」

「ああ。期間が決まってるらしい」

 私は透空さんと順調に交際を続けている。
 透空さんは仕事が忙しいから、ゆっくり会える時間は少なかったけれど、お昼ご飯や夕ご飯を作りに行ったり、仕事帰りに彼が私の家に寄ってくれることもある。
 明日は久しぶりに休みが重なったため、仕事が終わったあと、今日は透空さんの家にお泊りに行く予定だったけれど、彼から「イルミネーションを見に行こう」と誘われた。

 車から降り、ライトアップされている道を手を繋ぎながら二人で歩く。

「綺麗ですね」

 いくつも重なった光のランプが幻想的だ。

「月の光の方が好きだけど。これはこれで綺麗だな」

 月の光か。
 そうだ、今では思い出すことが少なくなったけれど。アニル様も月や星の光が好きだった。
 夜中に誘われて二人で馬を使って高台に行き、夜景を見たこともあったな。

 あんなに憎かった前世の想い人も、透空さんのおかげですっかり前世と現世を切り替えることができるようになった。
 アニル様はアニル様で似ているけど、透空さんは透空さん。最初は面影が重なるたびに怖かった。
 カルマが解消されたとでもいうのかな。
 前世の記憶は残っているけど、悪いことばかりではない。
 良いこともぼんやりと思い出すようになった。

 ふと、ベンチを見ると、カップルが二人で写真を撮っていた。
 そういえば、私たちって二人で写真を撮ったことがないかも。
 せっかくだからこの綺麗な夜景と一緒に写真を撮りたい。
 透空さんは嫌がるかな。

 チラッと透空さんを見ると
「どうした?」
 目が合った。

「私、透空さんと一緒に写真撮りたいです。ダメですか?」

「ああ、俺も撮りたい。そこのベンチに座って撮るか?」

 近くのベンチが空いていた。
 二人で座り、私は自分のスマホを取り出した。
 自分で言っておいてドキドキする。
 人通り多いし、たくさんの人に見られているかも。
 自分でスマホを持ち、腕を伸ばしシャッターボタンを押そうとしたら
「雫羽、遠い。もっとくっついて。腕、疲れるだろ?俺が撮るから貸して」「はい」
 私は透空さんにスマホを渡した。

「もっと笑って」

 カメラを見ると、透空さんは普通に笑っている。
 ええ、普段こんなに笑わないのに。
 私もぎこちないかもしれないが、一生懸命口角をあげてみた。

 その瞬間、パシャっと音がした。

「うーん。これはこれで可愛いから良いか」

 先生が見せてくれた写真、私の顔ぎこちない。
 真っ赤。目が笑っていない。

「可愛くないです」

「可愛いよ」

 透空さんはカッコ良い。ズルい。
 でも記念の一枚目の写真だから。嬉しい。

「俺にも写真、送って」

「はい」

 ピコンとアプリを使って写真を送ると
「嬉しい。これからいろんなところ、たくさん行こう」
 透空さんの言葉にコクっとうなずく。

 大丈夫、信じよう。
 これから私はずっと透空さんと一緒なんだ。
 前世のせいか、現世の恋愛のせいかわからないけれど、少しだけ不安になっちゃった。
 ざわざわってするこの気持ち、なんだろう。
 この幸せな時間を失いたくないから、防衛反応なのかな。

 マイナスなことを考えないで、前向きに生きなきゃ。
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