天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜

・・・

 看護師の宮下さんが捕まったと警察の方から説明を受けた。
 私を突き落とした犯人は宮下さんで、さらに点滴へ薬剤を混ぜ、私を殺そうとしたらしい。
 面白おかしくメディアで取り上げられたニュースは、一瞬熱を帯びたが、すぐに飽きられてワイドショーのネタからは話が消えた。

 私が知らない彼女の一面や殺害動機はニュースで詳しく知ったけれど、私、ニュースで言われているような「好意がある人を盗られた」的なことはしていないと思うのに。

 高木先生もそれについては詳しく話してはくれなかった。
 私の身体もだんだん動くようになったけど、一つ困ったことがある。
 大切なスマホが転落した時に壊れてしまったこと。

 新しいスマホは、契約が必要だろう。
 きっとデータはクラウドに残っているはず。
 まぁ、いいか。

 会いたかった友人はニュースを見て訪ねてきてくれた。
 両親は私のことなんて放置。
 働けないことがわかっているから、何の連絡もない。
 病院からの連絡も一切無視をしているらしい。
 きっと入院費用のことを気にして、連絡を無視しているんだろうと思う。

 一か月後、指先を動かせるようになった私は、車イスに乗って生活できるまでに回復した。

 退院はまだできず、病院でのリハビリを継続中。
 だけど、外出許可が下り、ヘルパーさんの力をかり、スマホの契約に行くことになった。

「ああ。疲れた」

 久しぶりに外へ出た時は、空気が新鮮で気持ち良かったけど、やっぱり契約の署名とかまだ身体が本調子ではないから疲れちゃった。

 ベッドへの移乗を手伝ってもらい、ヘルパーさんは帰宅。
 夜になり、一人きりの時間になった。
 わくわくしながら、スマホを立ち上げる。

 店員さんがデータを同期させてくれたから、すぐに以前の状態に戻ったみたい。

「最後に連絡してた人って誰なんだろう」

 メッセージや通話記録を確認する。

「えっ?」

 スマホの画面には<風見>の文字が表示され、内容を確認する。

<今度はどこに行きたい?>

 そんなメッセージのやり取りが最後だった。
 メッセージを過去にさかのぼっていく。
 ドキドキして、心臓が止まりそう。

 そこには私が風見先生と親密にやり取りをする記録だけが残っている。
 高木先生とのやり取りなんて、一度もない。
 頭が痛くなった。
 もしかして、私、とんでもない間違いをしていたの?

 鼓動が大きくなって、パニックになってしまいそう。呼吸が苦しい。

 本当の自分を取り戻したい、そんな強い気持ちからか、頭痛に襲われながらも、写真のアプリをタップする。

 そこには綺麗なイルミネーションの中、風見先生と楽しそうに写っている私の姿があった。

 大粒の涙が流れ、止まらない。
 頭の痛み、それに心の痛みを同時に感じている。

「私、こんな顔をして笑ってるんだ」

 幸せそうな自分の顔を見て、ズキンと一度痛みが頭の中で広がる。

「思い出した……。私の大切な人は、透空さんだったんだ」

 元カレから盛大に裏切られ、支えてくれた透空さんのこと。私の作るお弁当を美味しく食べる彼の姿。

「雫羽」と呼ばれ、彼の膝の上で過ごした瞬間、頭がパンクしそうになるくらい、彼との記憶が蘇る。涙がとまらない。

 忘れてしまったことを透空さんは怒っているから、全然会いに来てくれなくなっちゃったの?

 ううん。きっと違う。私のことを想ってだよね。
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