天才外科医からの求愛〜傷跡ごと甘く癒されて〜
「透空さんっ!」

 私が声を出すと
「ほら。いつも良いところを俺から盗っていくんだよ、風見先生は」
 まるで透空さんが近くにいるのをわかっていたかのように、高木先生はスッと私から離れる。

 もしかして、さっき肩が反応した時、誰かが歩いてきたことがわかっていたのかな。

「会わないのにいつも雫羽ちゃんの心配して、風見先生が病室の近くに来てたの知ってるよ」

 捨て台詞を吐くように、高木先生は
「ばいばい。あ、俺、自分が悪いとは思っていないから」
 透空さんの肩をポンポンと叩き、病室から出て行った。

 透空さんはイスに座ることなく、ばつが悪そうに私を見つめる。
 言わなきゃ。
 本人を目の前にしたら、急にドキドキしてきちゃった。
 ギュッと胸元の服を掴む。

「どうした?具合、悪いのか?」

 透空さんは私の様子を見て、近くに寄ってくれた。
 手を伸ばし、透空さんの親指を掴んだ。

「雫羽……?」

「記憶が戻ったんです。私が好きなのは、透空さんなんです。ごめんなさい。遅くなって」

 透空さんの親指をギュッと握る。
 透空さんは、どんな気持ちでいるんだろう。
 しばらく何も答えてはくれなかった。
 
 呆れているんだろうか?
 それとも別に好きな人ができた?
 怒っている?
 透空さんの返事を待つ。

 透空さんは、私のベッドサイドにあるイスに座り、私が掴んでいる手をギュッと握り返してくれた。

「ありがとう。雫羽。記憶を取り戻してくれて」

 透空さんの顔は嬉しそうというより、どこか困ったような切なそうな顔をしている。
 そんな表情、はじめて見たかも。

「本当にごめんなさい。心配かけて。私、これからも透空さんと一緒にいたいです」

 都合の良い話かもしれない。だけど、私は透空さんと一緒にいたい。
 そんな私の言葉に透空さんなら<当たり前だ>って答えてくれることを願っていた。

「俺も雫羽のことが大好きだ」

 透空さんの返事に胸が熱くなる。

「良かっ……」

「だからこそ、俺は雫羽と一緒にいることができない」

 透空さんは私が握っている手をゆっくりと離した。

「どうしてっ?」

「俺と一緒にいると、雫羽がいつも危ない目に遭うから。前世は俺のせいで亡くなってしまった。現世だって俺のせいで危ない目に遭ってこんなに大けがしてる」

 待って。
 どういう意味?前世って?
 あれ、そういえば、記憶を失くす前の私は、前世の記憶があった気がする。

 その記憶を透空さんに話していたのを思い出す。
 現世も危険な目ってもしかして……。

「明日、警察からきちんとした説明があると思う。今夜はゆっくり休んで。雫羽は絶対良い人と幸せになれるから。ありがとう」

 ポンと頭を優しく撫で、透空さんは立ち上がり、部屋から出て行こうとした。

「待ってくださいっ。透空さんっ!」

 追いかけたいけど、身体が思うように動かない。
 下半身に力が入らなくて。

 どんどん透空さんは遠くに行ってしまう。

 私の身体、動いてよ!

 腕に力を思いっきりいれ、その反動でベッドから足を出す。

「透空さんっ!」

 足が床に着いたと思って、一歩踏み出そうとしたけれど、体重を支える力が足に入らない。

「っ……」

 転びそうになる。

「雫羽っ!」

 透空さんが振り返って、転びそうになった私を両手で支えてくれる。

「きゃあっ」
「くっ!」

 私は透空さんに覆いかぶさるような態勢で転んでしまった。

「あー。あぶねー。良かった。ケガないか?」
 
 私は透空さんの上にいる。
 透空さんの胸、腕、綺麗な顔、こんなに近くにあるの久しぶりだ。
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