身代わりの結婚は本当の愛のために
 詩乃との結婚は、芸能人ということでイメージや宣伝にもなるのかもしれない。
しかし、私のようなただのその辺の会社員と結婚しても、モデルにもなれないし、利点はない。

「はい、私の大切な妹ですのよ。私の縁談が決まったとき、自分ならよかったのに、そう言ってたものね」
嘘ばかり言う……。なにが「大切な妹」だ。

 私のことなんて、自分の引き立て役か、都合の悪いことを押しつけるための存在だとしか思っていないくせに。
 ここで怒鳴ってしまいたかったが、そんなことをすれば父がなにを言い出すかわからないし、常盤としての体面にも関わる。
 私はグッとこらえ、誰にも見えないように机の下で、指先が真っ赤になるほど手を握りしめた。

「私たちの利益にならない結婚なら、ほかからもたくさんの見合い話は来ているんですがな……」
 抑揚なく放たれた久遠社長の父の言葉に、今まで詩乃を説得しようとしていた父が、今度は私を見た。

「真白、結婚しなさい」
 やっぱり――。
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