身代わりの結婚は本当の愛のために
 声の主は見合い相手である久遠社長で、そう口にしつつ自身の父に視線を向ける。それを聞いた久遠社長のお父様は「言ったら、この場には来ないだろう」と言い放った。

 これではどっちも、どっちだ。
 ありえない――そう思ったときだった。

「あの。せっかく、このような素敵な場をいただいたんです……」
まるで、いいことでも思いついたかのように、詩乃の声が響いた。
なんとなく不穏なその言葉に、私は目を見開いて詩乃を見る。そして、やはり詩乃は私に視線を向けていた。

「真白、妹との結婚はいかがでしょうか? 私が姉ということで、この素敵な縁談を頂戴しましたが、本当は妹がうらやましがっていたんですのよ」

「詩乃!」
その言葉に、両親と私の声が同時に響いた。自分が嫌になったからと、なんでも私に押しつけるのは、昔から変わっていない。

「真白……さん?」
 そう言うと、久遠社長のお父様は私に視線を向けた。その値踏みをするような視線は、今まで何度もいろいろな人から向けられてきたもので、今さらなんとも思わない。
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