身代わりの結婚は本当の愛のために
「申し訳ありません。私、これから撮影がありまして……。相手が真白に変わったので、お暇させていただいても?」
 絶対に嘘だと確信があったが、自分に関係ないことだから、この場にはもういたくないのだろう。
「そうだな」
 そう言うと、なんと父と母も立ち上がった。
 どうして詩乃が帰るからといって、自分たちまで帰ろうとするのか。もうひとりの娘が結婚するというのに――。

「お父様! 待って。詩乃の代わりに私が結婚するんでしょう? 最後までここにいるのがあたり前よ」
 私がそう口にすると、悠聖さんが「いえ、あとはふたりで話しますので、結構ですよ」と、淡々とした口調で答えた。
「でも……」
 ためらいつつ、私は久遠社長のお父様たちに視線を向けた。そんな私に答えるように、彼は静かに口を開く。

「結婚はします。弁護士を残して、あなたたちもお帰りください」
 痛いほど冷たい声音に、お父様たちもすごすごと立ち上がった。
 そして両家の人々は、ぞろぞろと部屋を出ていき、部屋の中は一気に静まり返った。
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