好きをいう前に君の声は風になる
2花火の約束

第六話

ピーピー、ピピピ!!

小鳥の鳴き声で目を覚ました。病室の窓を閉めているのにも関わらず、小鳥の声が聞こえるのはなぜだろうか。
私は体を起こした。
そして、鏡に映る自分の顔を見る。
私は病気なんだ.....
ベッドのそばに置いてあるスリッパを履いて窓の方に向かった。

ガラガラガラ

片手で窓を押さえながら片手で窓を開けた。
「すぅ〜‥‥はぁ〜‥」
目を瞑りながら空に向かって深呼吸をした。気持ちのいい朝がこんな私を向かい入れてくれた気がした。
私の病室は棟の一番端っこにある。右隣にはあまり話したことのない老婆が一人入院している。
左隣には誰もおらず、宮古島の街が鮮明に映し出されていた。
宮古島には、約53000人の人口が住んでいる。例えば、東京都に比べると、264倍もの差がある。私はこの情報を知ったとき、驚きを隠せなかった。
私は窓際に手をついたまま、空を見上げた。
目の前の木に鳥が、一匹、二匹、三匹———
仲良く大きな羽を広げて飛んでいった。
視線を空から街に移した。
制服を見に纏って自転車で登校する生徒。
大きなキャリーケースを待って急いで歩いているスーツの人。
どこか見覚えのある顔の人が街を埋め尽くしていた。たったの53000人ならば、一人一回は顔を見たことあるかな。
窓は開けたまま、近くのパイプ椅子に腰掛けて、リモコンを手に取りテレビをつけた。
『およそ1ヶ月後に宮古島祭が始まりますね〜』
テレビキャスターの女性が言ったこの一言に、私の心はギュッと狭くなった。
私は急いで立ち上がり、カレンダーを見た。
「ほんとだ‥‥」
過去の私が、”この日”に丸をつけていたのだ。そして、大きく『宮古島祭』と書かれていた。

『宮古島祭』

宮古島内で開催される大規模なお祭り。町内の職員が一ヶ月前から準備を初める。主な行事は、食事の出店、花火、神輿などといった、典型的やお祭りだ。
その中でも毎年大トリを飾るのは、花火だ。
島外内関係なく、何十人もの花火職人が集まり、暗闇に染まった宮古島の島を色鮮やかに彩る。
入院する前は、毎年、葉那と見に行っていた。

私は宮古島祭の特集に夢中になっていた。

コンコンコン

「入りますよー」
『今年の宮古島祭は、一味違います!』
「‥‥!」
今年の宮古島祭は5000発の花火が打ち上がるらしい。5000発‥‥想像がつかないな。
「すげぇな」
「え!?」
いつの間にか、先生が真後ろに立っていた。
「いつからいたんですか!?」
先生は腕を組みながらテレビを見ていた。
「5000発ってすごいな。去年は雨で中止になったからか」
「こっち、座ります?」
私は先生に隣のパイプ椅子を勧めた。
先生は分かっていたように隣に座った。さっきより、ほんの少しだけ、距離が近くなった。
ふと見る先生の横顔は、凛としていた。鼻が高くて顎もシュッとしてて。おまけに二重目がぱっちりと出来ていた。
不思議なことに、先生はいつも佐野さんと一緒なのに、今日は一人で部屋にやってきた。
大きな重機と一緒にやってくる佐野さん。
先生に聞こうとも思ったが、先生は子供のようにテレビを見つめていた。そんなに花火が気になるのかな?
「先生、花火好きなんですか?」
「まぁまぁかな」
「そうですか。私は、大好きです」
「ふ〜ん」
先生は相槌を打つだけで再びテレビを見た。
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