好きをいう前に君の声は風になる
第八話
ガラガラガラ
立ち上がった後すぐに、先生の手を離した。廊下に出ると、佐野さんが車椅子の前に立っていた。
「空音ちゃん、ここ座ってね」
「ありがとうございます」
車椅子に座った。
佐野さんの表情も、先生の表情も、見ることはできなかった。
「それじゃ、行きますよ〜」
佐野さんの声が耳にしっかりと届いた。
何となくだけど、後ろには先生も一緒にいる。
そりゃそっか。
先生は、私の担当医なんだから。
ガタン
「今日は暑いね〜」
「そうですね」
とりあえず返答した。
病院内は朝なのに笑い声で溢れていた。
私がいる4階の大広場では、多くの老人が看護師と話をしていた。顔にたくさんのシワを作ってみな、大きく笑っていた。
この階に10代は私だけ。
この光景はいやでも慣れちゃった。
「そういえば、空音ちゃんが読んでた漫画がアニメ化しててさ。見たけどやっぱり漫画の方が面白いね」
「原作を映像化するのって、失敗か成功の2択なんでね。今回のは失敗作ですよ」
「だって登場人物とか全然違ったじゃん!」
「私が好きだったキャラも全カットだったし。もう見ない」
やっと、普通の声が出た。
よかった———
「おーい!」
誰かの声が大きく響いた。
私はただ大きな声だな、と思いながら前を見ていた。
すると、佐野さんが車椅子を押すのを辞めた。私は不思議に思い後ろを振り返った。
そこには、
派手な杖をついたお爺さんがいた。
その人は、どこかで見たことがあった。
「おおやっぱり!君だよ君!」
私のことを指差しながら歩いてきた。
「あの....どちらさ...」
「山おじちゃんだ!覚えておるかい?」
「....山おじちゃん?あぁ!山おじちゃん!?」
この病院で、ひょんなとこから出会った、入院している山おじちゃん。
検査で初めてこの病院に来た時、なぜか話しかけられた。特に前々から知り合いと言うわけでもないのに。
「どうしたんだい?」
山おじちゃんは歳を召しているはずなのに、驚くほど元気。
「今から検査に行くんです」
山おじちゃんは視線を私の方から先生や佐野さんの方に向けた。
「そうかそうか。頑張るんじゃぞ!」
私は山おじちゃんに向かって小さく頷いた。
そのまま車椅子は山おじちゃんの横を通り過ぎていった。
「......」
山おじちゃんは少しだけ微笑んでシワが溜まった手をゆっくりと上げて手を振ってきた。
その手は、遠目から見ても震えているのが分かった。
「空音ちゃん知り合い?」
「知り合いというか、この間話しかけられて」
「あの方いい人だよね〜」
私は佐野さんに、そうですね、と答えた。
対して、先生はいるのかってくらい静かであった。
しばらく車椅子を押してもらい、私たちはエレベーターに乗り込んだ。
佐野さんは一階のボタンを押した。
エレベーター内には誰もいない。
3人だけの空間となった。
誰も喋ろうとしなかった。
無言の状態が続き、かなり気まずい。
(早く一階に着け!)
ピー
『一階です』
エレベータの音声が響き、私は少しだけ安堵した。
「よいしょっ!」
先生が先に降りてエレベーターの扉を押さえててくれていた。
「ありがとうございます」
佐野さんがお礼したのに続いて、私もコクリと頷いた。
目が合って、先生はニコッと優しく微笑んだ。
「第3CTですよね?」
「そうです」
私はどうやら、第3CT室に行くようだ。
今となり、急激な緊張。
このまま死んでしまいそな心臓の速さ。
「ちょっとここで待っててね」
佐野さんは車椅子の安全装置を作動させてから部屋の中に入ってしまった。先生もそれに続き部屋に入った。私は、CT室の前で一人になってしまった。
部屋の少し前には診療待ちの人が座っていた。少人数だったけど、恥ずかしかった。
とりあえず、私は周りをキョロキョロと見渡した。何か気が紛れるものはないか。
ガラガラ
「あはようございまーす」
すると、耳鼻咽喉科室から、一人の医師が出てきた。彼もまた、先生のように首に聴診器をつけていた。
第一印象、身長が高くて驚いた。
「......」
私は黙ってその先生を見つめた。
「先生!今日の診察です!」
「ありがとう」
若くて美人な看護師さんに話しかけられてた。
私はその医師に視線をやっていると、医師がトコトコとペンギン歩きのようにしながらこちらにやってきた。
「えっ」
(これ、私のとこに来てるよね?)
その先生は私の前で止まった。
「君、こんなところでどうしたの?」
立ち上がった後すぐに、先生の手を離した。廊下に出ると、佐野さんが車椅子の前に立っていた。
「空音ちゃん、ここ座ってね」
「ありがとうございます」
車椅子に座った。
佐野さんの表情も、先生の表情も、見ることはできなかった。
「それじゃ、行きますよ〜」
佐野さんの声が耳にしっかりと届いた。
何となくだけど、後ろには先生も一緒にいる。
そりゃそっか。
先生は、私の担当医なんだから。
ガタン
「今日は暑いね〜」
「そうですね」
とりあえず返答した。
病院内は朝なのに笑い声で溢れていた。
私がいる4階の大広場では、多くの老人が看護師と話をしていた。顔にたくさんのシワを作ってみな、大きく笑っていた。
この階に10代は私だけ。
この光景はいやでも慣れちゃった。
「そういえば、空音ちゃんが読んでた漫画がアニメ化しててさ。見たけどやっぱり漫画の方が面白いね」
「原作を映像化するのって、失敗か成功の2択なんでね。今回のは失敗作ですよ」
「だって登場人物とか全然違ったじゃん!」
「私が好きだったキャラも全カットだったし。もう見ない」
やっと、普通の声が出た。
よかった———
「おーい!」
誰かの声が大きく響いた。
私はただ大きな声だな、と思いながら前を見ていた。
すると、佐野さんが車椅子を押すのを辞めた。私は不思議に思い後ろを振り返った。
そこには、
派手な杖をついたお爺さんがいた。
その人は、どこかで見たことがあった。
「おおやっぱり!君だよ君!」
私のことを指差しながら歩いてきた。
「あの....どちらさ...」
「山おじちゃんだ!覚えておるかい?」
「....山おじちゃん?あぁ!山おじちゃん!?」
この病院で、ひょんなとこから出会った、入院している山おじちゃん。
検査で初めてこの病院に来た時、なぜか話しかけられた。特に前々から知り合いと言うわけでもないのに。
「どうしたんだい?」
山おじちゃんは歳を召しているはずなのに、驚くほど元気。
「今から検査に行くんです」
山おじちゃんは視線を私の方から先生や佐野さんの方に向けた。
「そうかそうか。頑張るんじゃぞ!」
私は山おじちゃんに向かって小さく頷いた。
そのまま車椅子は山おじちゃんの横を通り過ぎていった。
「......」
山おじちゃんは少しだけ微笑んでシワが溜まった手をゆっくりと上げて手を振ってきた。
その手は、遠目から見ても震えているのが分かった。
「空音ちゃん知り合い?」
「知り合いというか、この間話しかけられて」
「あの方いい人だよね〜」
私は佐野さんに、そうですね、と答えた。
対して、先生はいるのかってくらい静かであった。
しばらく車椅子を押してもらい、私たちはエレベーターに乗り込んだ。
佐野さんは一階のボタンを押した。
エレベーター内には誰もいない。
3人だけの空間となった。
誰も喋ろうとしなかった。
無言の状態が続き、かなり気まずい。
(早く一階に着け!)
ピー
『一階です』
エレベータの音声が響き、私は少しだけ安堵した。
「よいしょっ!」
先生が先に降りてエレベーターの扉を押さえててくれていた。
「ありがとうございます」
佐野さんがお礼したのに続いて、私もコクリと頷いた。
目が合って、先生はニコッと優しく微笑んだ。
「第3CTですよね?」
「そうです」
私はどうやら、第3CT室に行くようだ。
今となり、急激な緊張。
このまま死んでしまいそな心臓の速さ。
「ちょっとここで待っててね」
佐野さんは車椅子の安全装置を作動させてから部屋の中に入ってしまった。先生もそれに続き部屋に入った。私は、CT室の前で一人になってしまった。
部屋の少し前には診療待ちの人が座っていた。少人数だったけど、恥ずかしかった。
とりあえず、私は周りをキョロキョロと見渡した。何か気が紛れるものはないか。
ガラガラ
「あはようございまーす」
すると、耳鼻咽喉科室から、一人の医師が出てきた。彼もまた、先生のように首に聴診器をつけていた。
第一印象、身長が高くて驚いた。
「......」
私は黙ってその先生を見つめた。
「先生!今日の診察です!」
「ありがとう」
若くて美人な看護師さんに話しかけられてた。
私はその医師に視線をやっていると、医師がトコトコとペンギン歩きのようにしながらこちらにやってきた。
「えっ」
(これ、私のとこに来てるよね?)
その先生は私の前で止まった。
「君、こんなところでどうしたの?」