激甘嘘婚~冷徹社長は初恋秘書を手放さない~
第一章 立派な社長にしてみせます
国内最大手キャラクター関連企業『ピュリラックス株式会社』。
オフィスビルが立ち並ぶ東京の一等地で、二十階建ての本社ビルは、今日も堂々と『Purirax』の文字ネオンを輝かせている。
創業六十年、本社ビルがこの地にできて二十年。
豊富なグッズ展開やテーマパーク運営などで収益を伸ばし続け、今では日本人であれば誰もが知っている企業に成長した。
その七階に位置するデジタルコンテンツ部にて、チームリーダーの石立由利は、丸眼鏡にグレーのパンツスーツ、背中まで伸びた黒髪を後ろでひとつにまとめたいつものスタイルで、今日もテキパキと業務をこなしていた。
特許や商標、著作権などの知的財産を管理するIP管理部との会議が終わるなり、ウェブキャンペーンの打ち合わせ資料を手早くまとめる。その後は人気キャラの新規SNSスタンプの納品データを確認し、修正点をデザイナーにメールで指示した。
二カ月後の四月リリースを予定しているので、春をテーマにしたスタンプだ。
午前中にする予定だった仕事はひと通り終わったが、少し時間があったので、部下がアップした公式SNSの文言もチェックする。
(そろそろお昼休みに入ろうかしら)
壁かけ時計を確認した時、パソコンにメールが届いた。
人事部からだ。
【石立由利 様
このたび、これまでの業務実績を評価し、あなたのプロダクトマネージャー就任が決定いたしました。
今後はより高い責任感を持って、業務に取り組んでください。
詳細な業務内容につきましては、改めてご案内します。
今後のよりいっそうの活躍を期待しています。】
プロダクトマネージャーへの昇進については、少し前に部長から内示をもらっていた。ついにきたかと目を輝かせ、思わず「やった!」と呟く。
すると、通りかかった黒髪ショートボブの女性社員が、由利のパソコン画面を見て足を止めた。
二十九歳の由利より二歳年下の後輩、川瀬翠だった。
「わー! 石立さん、プロダクトマネージャーに昇進されるんですね! おめでとうございます!」