激甘嘘婚~冷徹社長は初恋秘書を手放さない~
見事な生花が存在感を放っている会長室では、志乃がソファーに座って由利を待っていた。
濁りのない白髪ショートヘアに、えんじ色のタイトスカートスーツ。
圧倒されるほどの貫禄と滲み出る品のよさに、同じ空間にいるだけで息が詰まりそうだ。
「石立由利さんね。ようこそいらっしゃいました」
彼女の完璧な微笑みが、由利の緊張をよりいっそう煽る。
「……お会いできて光栄です」
正解かどうかわからないが、とりあえずそう答えた。
高級そうなカップから立ち上る紅茶の湯気を目で追うだけで、精いっぱいの状況である。
「あなたに頼みがあるの」
志乃が膝の上で手を組み合わせ、身を乗り出した。
微笑んではいるものの、隙のなさをビシバシと感じる。
「少し問題が起きてね、社長が退任することになったの。明日、発表があるわ」
急な話に、由利は目を丸くする。
「そんな……どうされたのですか?」
「理由を簡潔に話すわね」
それから志乃は、驚くべきことを語った。
社長の堂前彰とグラビアアイドルの密会がスクープされ、明日発売の週刊誌への掲載が決まったらしい。
「我がピュリラックスは、童心に返ることと、リラックスできる癒しを目標に掲げている会社よ。社長の不倫なんて言語道断。今夜記者会見をして、彰にはすぐにでも社長を退任してもらうわ」
志乃がピシャリと言う。
落ち着いてはいるが、不祥事を起こした息子に対してそうとう怒っているのが伝わってくる。
(彰社長が不倫……。確かにモテそうではあるけど)
堂前彰はグレーヘアで百八十センチあるスタイル抜群のイケオジだ。
さりげない気遣いのできる紳士で、女性社員から人気があった。
(次の社長は堂前聖司で決まりね。ブランドイメージを保持するためには、評判のいい彼にすぐに社長になってもらうのが一番よ。さすがの判断力だわ)
聖司が新社長になれば、会社のイメージも順調に回復して、業績の低迷を防げるだろう。
「次の社長は、朔也に就任させることにしたわ」
ところが、志乃の口から思いがけない名前が飛び出し、由利は凍りつく。
「新社長は、朔也よ」
聞き間違いかと思っていると、志乃が念を押すように、再びその名前を口にした。
濁りのない白髪ショートヘアに、えんじ色のタイトスカートスーツ。
圧倒されるほどの貫禄と滲み出る品のよさに、同じ空間にいるだけで息が詰まりそうだ。
「石立由利さんね。ようこそいらっしゃいました」
彼女の完璧な微笑みが、由利の緊張をよりいっそう煽る。
「……お会いできて光栄です」
正解かどうかわからないが、とりあえずそう答えた。
高級そうなカップから立ち上る紅茶の湯気を目で追うだけで、精いっぱいの状況である。
「あなたに頼みがあるの」
志乃が膝の上で手を組み合わせ、身を乗り出した。
微笑んではいるものの、隙のなさをビシバシと感じる。
「少し問題が起きてね、社長が退任することになったの。明日、発表があるわ」
急な話に、由利は目を丸くする。
「そんな……どうされたのですか?」
「理由を簡潔に話すわね」
それから志乃は、驚くべきことを語った。
社長の堂前彰とグラビアアイドルの密会がスクープされ、明日発売の週刊誌への掲載が決まったらしい。
「我がピュリラックスは、童心に返ることと、リラックスできる癒しを目標に掲げている会社よ。社長の不倫なんて言語道断。今夜記者会見をして、彰にはすぐにでも社長を退任してもらうわ」
志乃がピシャリと言う。
落ち着いてはいるが、不祥事を起こした息子に対してそうとう怒っているのが伝わってくる。
(彰社長が不倫……。確かにモテそうではあるけど)
堂前彰はグレーヘアで百八十センチあるスタイル抜群のイケオジだ。
さりげない気遣いのできる紳士で、女性社員から人気があった。
(次の社長は堂前聖司で決まりね。ブランドイメージを保持するためには、評判のいい彼にすぐに社長になってもらうのが一番よ。さすがの判断力だわ)
聖司が新社長になれば、会社のイメージも順調に回復して、業績の低迷を防げるだろう。
「次の社長は、朔也に就任させることにしたわ」
ところが、志乃の口から思いがけない名前が飛び出し、由利は凍りつく。
「新社長は、朔也よ」
聞き間違いかと思っていると、志乃が念を押すように、再びその名前を口にした。