激甘嘘婚~冷徹社長は初恋秘書を手放さない~
「お給料は、こちらを参考にしてちょうだい」
由利の声を遮るようにして、志乃がテーブルに小さな紙を置いた。
「……!」
印字された数字が目に入り、由利は声を詰まらせる。
およそ、今の給料の二倍に相当する金額だった。
「こ、こんなにいただけるのですか?」
「当然よ。我が社の行く末を左右する、特別な業務を引き受けていただくんですもの。加えて、ボーナスは今の三倍支給するわ」
「三倍!」
由利の声が上ずった。
「ただし、あなたが特別秘書としての役目をきちんと果たしているか、私が定期的にチェックします。成果が出ていない場合は秘書をやめてもらうわ」
志乃が、由利に厳しい目を向けた。
(お仕事だもの、それは当然だわ。だけどうまく特別秘書の業務をこなせたら、海の留学費用が出せる。陸だって、柔道に集中させてあげられるわ)
一番目の弟の海は大学二年生で、英米文学科に通っている。
昔から英語が得意だった海は、ひそかに海外留学を夢見ていることを知っていた。
海の本棚の一角に、他の本で隠すようにして、留学に関するパンフレットが置かれていたからだ。
二番目の弟の陸は柔道推薦で大学に進学したものの、学費工面のためにバイトと並行しながら頑張っているため、部活に集中できず苦労している。
三番目の弟の空はまだ高校生で、大学進学に向けてこれからお金が必要だ。
石立家は、由利が中学の時に病気で父を亡くしている。
母は、ホームヘルパーの仕事をしながらひとりで四人の子供を育てた。
遺族年金が支給されるにしても、四人の子供を大学に行かせるには限界がある。
由利が働くようになってからは、奨学金でまかなえない部分の弟たちの学費をサポートしている。
だがさすがに留学させる余裕はないし、弟たちにもバイトをしてもらわないと、生活が立ち行かなかった。
そういった金銭面の問題が、朔也の秘書になることで、一気に解決できるかもしれない。
由利の心が大きく揺れた。
「どう? 引き受けてくださる?」
志乃は、由利が承諾するのが当然と思っているような雰囲気だった。
やり手の彼女のことだ、由利の家庭事情を把握済みなのかもしれない。
(本当はプロダクトマネージャーになりたかったし、デジタルコンテンツ部も離れたくない。だけど弟たちの幸せには変えられないわ)
「……はい。よろしくお願いいたします」
由利はじっくり考えた末に、心の迷いを消して、深く頭を下げた。
由利の声を遮るようにして、志乃がテーブルに小さな紙を置いた。
「……!」
印字された数字が目に入り、由利は声を詰まらせる。
およそ、今の給料の二倍に相当する金額だった。
「こ、こんなにいただけるのですか?」
「当然よ。我が社の行く末を左右する、特別な業務を引き受けていただくんですもの。加えて、ボーナスは今の三倍支給するわ」
「三倍!」
由利の声が上ずった。
「ただし、あなたが特別秘書としての役目をきちんと果たしているか、私が定期的にチェックします。成果が出ていない場合は秘書をやめてもらうわ」
志乃が、由利に厳しい目を向けた。
(お仕事だもの、それは当然だわ。だけどうまく特別秘書の業務をこなせたら、海の留学費用が出せる。陸だって、柔道に集中させてあげられるわ)
一番目の弟の海は大学二年生で、英米文学科に通っている。
昔から英語が得意だった海は、ひそかに海外留学を夢見ていることを知っていた。
海の本棚の一角に、他の本で隠すようにして、留学に関するパンフレットが置かれていたからだ。
二番目の弟の陸は柔道推薦で大学に進学したものの、学費工面のためにバイトと並行しながら頑張っているため、部活に集中できず苦労している。
三番目の弟の空はまだ高校生で、大学進学に向けてこれからお金が必要だ。
石立家は、由利が中学の時に病気で父を亡くしている。
母は、ホームヘルパーの仕事をしながらひとりで四人の子供を育てた。
遺族年金が支給されるにしても、四人の子供を大学に行かせるには限界がある。
由利が働くようになってからは、奨学金でまかなえない部分の弟たちの学費をサポートしている。
だがさすがに留学させる余裕はないし、弟たちにもバイトをしてもらわないと、生活が立ち行かなかった。
そういった金銭面の問題が、朔也の秘書になることで、一気に解決できるかもしれない。
由利の心が大きく揺れた。
「どう? 引き受けてくださる?」
志乃は、由利が承諾するのが当然と思っているような雰囲気だった。
やり手の彼女のことだ、由利の家庭事情を把握済みなのかもしれない。
(本当はプロダクトマネージャーになりたかったし、デジタルコンテンツ部も離れたくない。だけど弟たちの幸せには変えられないわ)
「……はい。よろしくお願いいたします」
由利はじっくり考えた末に、心の迷いを消して、深く頭を下げた。